2019年12月12日
平成28年度研究助成成果報告(3)
平成28年度研究助成成果報告(3)
藏城 雅文(大阪市立大学大学院医学研究科代謝内分泌病態内科学)
腸内細菌環境と尿酸代謝との関連性の検討
Yogurt containing Lactobacillus gasseri PA-3 alleviates increases in serum uric acid concentration induced by purine ingestion: a randomized, double-blind, placebo-controlled study
Masafumi Kurajoh, Yuji Moriwaki, Hidenori Koyama, Hiroshi Tsuboi, Hirotaka Matsuda, Naruomi Yamada, Chizuru Saito, Hiroshi Kano, Yukio Asami, Tetsuya Yamamoto
痛風と核酸代謝 第42巻第1号 2018年
藏城他は動物実験で尿酸値を低下させることが証明されているヨーグルトPA-3をヒトに投与し、実際に尿酸値が低下するか否か、また低下すればそのメカニズムは何かを検討した。試験はランダム化、盲検、プラセボ対照のクロスオーバー試験により行った。その結果、血清尿酸値の上昇は有意に抑制された(P = 0.033)。しかし、尿中の尿酸値の低下は見いだせなかった。そのため、血清尿酸値低下のメカニズムは腸からの吸収抑制によると推定している。通常、血清尿酸値低下のメカニズムは産生抑制か排泄促進であるが、腸からの吸収抑制を示した点で有意義な研究結果である。最近、日本からの研究で、腸内排泄が低下するタイプの高尿酸血症の存在が示唆されているが、これらを合わせ考え興味ある研究である。
程 継東(汕頭大学医学院第一付属病院)
高尿酸により単球/マクロファージ細胞へインスリン抵抗誘導に関する検討
1: Yuan H, Hu Y, Zhu Y, Zhang Y, Luo C, Li Z, Wen T, Zhuang W, Zou J, Hong L,Zhang X, Hisatome I, Yamamoto T, Cheng J. Metformin ameliorates high uric acid-induced insulin resistance in skeletal muscle cells. Mol Cell Endocrinol.
2017 Mar 5;443:138-145.
高尿酸血症はしばしば糖代謝の異常やインスリン抵抗性と関連する。また糖尿病の薬であるメトフォルミンはインスリン抵抗性を改善する。著者他はマウスの横紋筋細胞の細胞株であるC2C12細胞を高尿酸血症の環境にさらし、活性酸素の発生が起きる事を確認した。それによりブドウ糖の取り込みが減少し、これがインスリン抵抗性のメカニズムであると推定している。これに対しメトフォルミンはAMPKを活性化しブドウ糖の取り込みを促進して尿酸によるインスリン抵抗性を改善する事を示した。尿酸と糖尿病の関連のメカニズムについて示唆に富む論文である。
2: Luo C, Lian X, Hong L, Zou J, Li Z, Zhu Y, Huang T, Zhang Y, Hu Y, Yuan H, Wen T, Zhuang W, Cai B, Zhang X, Hisatome I, Yamamoto T, Huang J, Cheng J. High Uric Acid Activates the ROS-AMPK Pathway, Impairs CD68 Expression and Inhibits OxLDL-Induced Foam-Cell Formation in a Human Monocytic Cell Line, THP-1. Cell Physiol Biochem. 2016;40(3-4):538-548.
高尿酸血症はメタボリック症候群と関係するが、これは単球/マクロファージが関係すると著者他は考えている。著者他はヒト単球細胞株THP-1を用いて尿酸が単球/マクロファージに及ぼす影響を調べた。高尿酸液にさらされたTHP-1細胞では活性酸素とAMPKの活性化が起き、CD68の表現障害が起きた。それによりoxLDL誘発性の泡沫細胞形成が起きた。著者他はこれが高尿酸血症がメタボリック症候群と関連するメカニズムを説明するのではないかと考えている。単球/マクロファージの重要性を示唆した論文である。
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