HOME »  平成28年度研究助成成果報告(1)

2019年04月18日

平成28年度研究助成成果報告(1)

平成28年度

【鳥居痛風学術賞】

崎山真幸(防衛医科大学校医学研究科)

ゲノムワイド関連解析とfine mappingを用いた痛風の感受性遺伝子ALDH2の同定

 

Sakiyama M, Matsuo H, Akashi A, Shimizu S, Higashino T, Kawaguchi M, Nakayama A, Naito M, Kawai S, Nakashima H, Sakurai Y, Ichida K, Shimizu T, Ooyama H, Shinomiya N. Independent effects of ADH1B and ALDH2 common dysfunctional variants on gout risk. Sci Rep. 2017 May 31;7(1):2500.

アルコール代謝に関係する2つの酵素の遺伝子と痛風との関連をGWAS研究に引き続き、詳細なSNVとの関連を調べた研究である。痛風のリスクとなる遺伝子、および多様性を知る上で重要な研究である。

 

Higashino T, Matsuo H, Okada Y, Nakashima H, Shimizu S, Sakiyama M, Tadokoro S, Nakayama A, Kawaguchi M, Komatsu M, Hishida A, Nakatochi M, Ooyama H, Imaki J, Shinomiya N. A common variant of MAF/c-MAF, transcriptional factor gene in the

kidney, is associated with gout susceptibility. Hum Cell. 2018 Jan;31(1):10-13.

過去のGWAS研究により痛風とMAF/c-MAFという腎臓の転写因子をコードする遺伝子との関連が示唆されていたが、本論文では詳細に関連性を検討し、確認した研究である。今後、そのメカニズムの研究が進むと思われる。

 

【田辺三菱賞】

安西尚彦(千葉大学大学院医学研究院)

尿酸を輸送基質とする腎尿細管トランスポーター分子同定

 

Otani N, Ouchi M, Hayashi K, Jutabha P, Anzai N. Roles of organic anion transporters (OATs) in renal proximal tubules and their localization. Anat Sci Int. 2017 Mar;92(2):200-206.

尿酸の腎臓における排泄と薬剤との関連のメカニズムを研究した論文である。アフリカツメガエルの卵を用いてOAT1 (SLC22A6), OAT3 (SLC22A8)などの発現と無機陽イオンの輸送との関係を調べている。利尿薬投与などで高尿酸血症となるメカニズムなどの研究に非常に役立つ論文である。

 

Furihata T, Anzai N. Functional Expression of Organic Ion Transporters in Astrocytes and Their Potential as a Drug Target in the Treatment of Central Nervous System Diseases. Biol Pharm Bull. 2017;40(8):1153-1160.

脳の星状細胞における無機イオントランスポータの発現についての研究である。星状細胞は主たる神経伝達物質であるグルタミン酸などの取り込みを行うなどの重要な役割を持っている。この論文ではシナプス裂隙におけるアミン神経伝達物質の除去に関係するトランスポーターを探し、OCT3とモノアミントランスポーターがこれを行うことを報告している。重大な脳疾患は多く、生理的物質だけではなく、薬物もトランスポーターと関係するので役立つ論文である。

 

【研究助成】

富岡直子(帝京大学薬学部人体機能形態学研究室)

高尿酸血症を呈するアルツハイマー病モデルマウスを用いた病態解析

 

Morimura N, Yasuda H, Yamaguchi K, Katayama KI, Hatayama M, Tomioka NH, Odagawa M, Kamiya A, Iwayama Y, Maekawa M, Nakamura K, Matsuzaki H, Tsujii M,

Yamada K, Yoshikawa T, Aruga J. Autism-like behaviours and enhanced memory formation and synaptic plasticity in Lrfn2/SALM1-deficient mice. Nat Commun. 2017

Jun 12;8:15800.

Lrfn2/SALM1はシナプスに関係する遺伝子であり、ヒトでは学習障害に関係する。マウスでノックアウトすると自閉症様症状を来すことを示した論文である。

 

荻野和秀(鳥取大学医学部附属病院)

酸化ストレスからみた左室拡張機能に対する尿酸降下薬の効果

 

Kuwabara M, Niwa K, Ohtahara A, Hamada T, Miyazaki S, Mizuta E, Ogino K,Hisatome I. Prevalence and complications of hypouricemia in a general population:

A large-scale cross-sectional study in Japan. PLoS One. 2017 Apr 27;12(4):e0176055.

低尿酸血症と疾患との関連を調べた研究である。聖路加病院と米子山陰労災病院での低尿酸血症の頻度は0.19%と0.58%であった。低尿酸血症の男性は腎不全の既往がコントロールより優位に高かったが他の疾患の頻度は変わらなかったと報告している。低尿酸血症の疾患リスクについて重要な研究である。

 

松尾洋孝(防衛医科大学校分子生体制御学講座)

痛風と無症候性高尿酸血症の比較によるゲノムワイド関連解析で炎症の個人差に関わる遺伝子を同定する

 

Higashino T, Takada T, Nakaoka H, Toyoda Y, Stiburkova B, Miyata H, Ikebuchi Y, Nakashima H, Shimizu S, Kawaguchi M, Sakiyama M, Nakayama A, Akashi A,

Tanahashi Y, Kawamura Y, Nakamura T, Wakai K, Okada R, Yamamoto K, Hosomichi K, Hosoya T, Ichida K, Ooyama H, Suzuki H, Inoue I, Merriman TR, Shinomiya N, Matsuo H. Multiple common and rare variants of ABCG2 cause gout. RMD Open. 2017 Aug 29;3(2):e000464.

ABCG2は尿酸値に強く関連する遺伝子であることはわかっている。この遺伝子の稀な多様性とありふれた多様性を調べた結果3のありふれた多様性と19の稀な多様性が発見できた。それぞれは独立に痛風に関係すると結論付けている。稀な多様性の痛風への影響を調べた重要な論文である。

 

Nakayama A, Nakaoka H, Yamamoto K, Sakiyama M, Shaukat A, Toyoda Y, Okada Y, Kamatani Y, Nakamura T, Takada T, Inoue K, Yasujima T, Yuasa H, Shirahama Y, Nakashima H, Shimizu S, Higashino T, Kawamura Y, Ogata H, Kawaguchi M, Ohkawa Y, Danjoh I, Tokumasu A, Ooyama K, Ito T, Kondo T, Wakai K, Stiburkova B, Pavelka K, Stamp LK, Dalbeth N; Eurogout Consortium, Sakurai Y, Suzuki H, Hosoyamada M, Fujimori S, Yokoo T, Hosoya T, Inoue I, Takahashi A, Kubo M, Ooyama H, Shimizu T,

Ichida K, Shinomiya N, Merriman TR, Matsuo H; Eurogout Consortium. GWAS of clinically defined gout and subtypes identifies multiple susceptibility loci that include urate transporter genes. Ann Rheum Dis. 2017 May;76(5):869-877.

GWASは弱い効果の表現型に関係する遺伝子を探索する方法である。著者らは痛風のリスク遺伝子をGWASにより探索し、新たなリスク遺伝子を含む関連遺伝子を報告している。尿酸だけではなく、痛風に関連する遺伝子を発見する事は貴重である。


HOME »  平成28年度研究助成成果報告(1)

PageTop