痛風・尿酸ニュース

遺伝子病というと

大山 博司(医療法人社団つばさ両国東口クリニック)

遺伝子病というと、高校の生物で教わったメンデル法則に基づいた1つの遺伝子の変異によって引き起こされる病気である単一遺伝子疾患を連想する方が多いと思います。遺伝様式によって常染色体優性遺伝、常染色体劣性遺伝、X連鎖遺伝などがあり、遺伝性のがんや神経性疾患、血友病などが該当します。

一方で痛風をはじめとして糖尿病、心筋梗塞、関節リウマチ、気管支喘息、アルツハイマー型認知症などの「日常的に多く見られる病気」にも近年遺伝が関わっていることも明らかになってきました。この遺伝現象を単一遺伝子疾患に対して複雑形質(多因子形質)と呼びます。複雑形質の研究手法として、大サンプルの遺伝子情報とコンピューターを用いた解析を行うゲノムワイド関連解析(GWAS:genome wide association study)が広く行われるようになってきました。

ゲノム解析により様々な病気に生涯にわたるリスクや個別の治療法を選択するゲノム医療の分野も急速に発展しています。

「日常的に多く見られる病気」の中でも特に痛風・高尿酸血症は、この遺伝子変化がその発症や進展に強く影響を与えていることが注目されています。当院の痛風専門外来で実施しているABCG2(ATP-binding cassette transporter subfamily G, member 2)やALDH2(aldehyde dehydrogenase 2)の変化は、10倍以上痛風発症のリスクを高めると報告されています。

痛風・高尿酸血症のリスクを知ることはもちろん重要ですが、ゲノム解析の結果により最適な尿酸降下薬の選択や、生活習慣の改善につながる指導に活用することがもっとも大切だと考えます。例えば、ゲノム解析の結果により個別の適正な飲酒量を設定することができれば栄養食事指導の実効性もより増すのではないかと考えます。

当院の痛風専門外来は、クリアランス検査による正確な病型診断やゲノム解析、関節超音波検査による関節内尿酸塩結晶沈着の把握などに基づく栄養食事運動指導や尿酸降下薬による適正な尿酸コントロールによって、関節内の尿酸塩結晶の消失(痛風関節炎が起きない状態)を目指しています。

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