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痛風・尿酸ニュース

ポストコロナとその先の学会・学術集会

安西 尚彦(千葉大学大学院医学研究院)

千葉大学の安西です。この度、痛風・尿酸財団理事長の山中先生よりご依頼を頂き、本項での執筆をさせて頂くこととなりました。
今回話題とさせて頂きますのは、私ども医療者・研究者と切っても切り離せない「学会・学術集会」であります。

この「痛風・尿酸ニュース」をご覧頂いております皆様は、おそらく「日本痛風・尿酸核酸学会」の会員である方々が殆どであるかと存じます。そしてそれ以外にご専門に従い様々な学会にご所属ではないかと。
私の場合も例に漏れず、また自他共に認める「学会好き」で「学会オタク」ですので、国内外合わせ20前後の学会に参加しております。1学会の年会費が1万円と仮定しますと、年間最低20万円以上(実際はもっと多く)支払っておりますので、外勤もしていないしがない基礎研究者の私は「学会貧乏」に陥っていることも確かです。
そうは申しますものの、昨年末、私が大会長としてパシフィコ横浜で「JPW2022大会/第96回日本薬理学会年会」を主宰させて頂き、お陰様をもちまして成功裏に終えることができました。「日本痛風・尿酸核酸学会」との共催ワークショップも開催させて頂きましたので、ここをお読みの先生方の中でもご記憶を頂いております方もおられるかと存じます。
また今年2023年の7月からは1949年から70年以上の歴史を持つ「日仏医学会」の会長を拝命しております。他に理事は日本生理学会、日本毒性学会、日本消化吸収学会に日本痛風・尿酸核酸学会と務めており、評議員も多数という状況です。
このように様々な学会の運営側として関係しておりますと、2020年初頭に始まり本年5月で一応の区切りとなった新型コロナ感染症パンデミック(所謂コロナ)は、学会と学術集会のあり方、あるいは会員・参加者からの視点を大きく変えたと言えるかと思います。学会と学術集会は確実に会員・参加者から「選ばれる」時代になったと思います。

2023年も終わりに近づく現在では、学術集会はほぼほぼ現地対面開催に戻りつつあるように見えますが、コロナの際にオンラインおよびオンデマンドで講演や発表を視聴することを覚えてしまった特に若い世代は、現地に行かなくても動画で視聴すれば十分、という認識を強く持たれた世代のように感じます。そこには今の時代の若者らしい人との接触を面倒くさいと感じる部分が大きいのかと思いますが、私のようなもう還暦間近で定年まで10年を切っているような世代からしますと、「人と会うこと」が重要であり、これこそが学術集会に参加する目的である、と若者とは正反対の価値感と言えます。
過去に対面で築いた人間関係を継続することはオンラインで出来ても、新しい人間関係をオンラインで始めることは無理と捉えるシニア世代と、今やSNSで見ず知らずの人と知り合いになっていくのに抵抗のない若い世代との違いも出てきているように思います。
SNS大好き人間の私は結局その中間なのですが、何れにせよ、これからは学会・学術集会が「何を提供するか?」が見られる時代となり、それが魅力的であれば参加者が増え、そうではないとなれば、参加する人が減るという、まあ当たり前なのですが、(国内に限れば)少ない参加者を学会同士が奪い合う「弱肉強食」の時代に入ってきた印象があります。

ひょっとすると、これは学会・学術集会に限ったことではなく、大学や会社、官庁などいずれの「組織」でも起きていることかもしれません。そこで問われるのは自分たちの存在意義、なんのためにあるのか?ではないかと思います。ミッションの再定義とも言えるかと思いますが、ひょっとしたら個人個人も問われているのか?、とも思われます。
元に戻って、では自分が関係している学会・学術集会はどうすべきか?、そろそろ皆で意見を交わして行く時期かな、と感じるこの頃です。

安西尚彦(千葉大学教授)

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