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理事長通信

第20号 安全と安心は違います

「安全安心」がひとつの四文字熟語になりつつありますが、安全と安心は違います。このことを思い知らされたのが、先日来の紅麹を含む健康食品の事件です。安全と安心は同じでないことを、この機に強調したいと思います。安全は客観的な概念で科学が決める、安心は主観的な概念で心が決める。安全はデータを科学的(統計学的)に分析して検証される、安心は安全性に基づいて信頼感ができれば生まれる。だから安全と安心は違う概念であり、一つの言葉にしてはいけないと思います。

我々医師が処方する医薬品は、基礎研究や臨床研究を含む科学的なデータ解析により安全性が確認された場合に限って、厚生労働省が認可しています。副作用が100%ないという医薬品はありませんが、病気を治すために使う薬物ですので、十分な有効性があり、科学的に安全性が保障されれば認可されます。さらに市販後も、副作用が問題になっていないかを入念にモニタリングされます。したがって安全性は科学的に確保されており、安心するに足るものと言えます。それでも、やっぱり医薬品は嫌だとか、処方する医者が信用できないとかで、安心して服用できないという人もいるかもしれません。

それに対してサプリメントや健康食品などの多くは、何となく安心だからという理由で気軽に手を出す人が多いように思います。今回の紅麹入りの健康食品もそのような一例かもしれません。実は健康食品にもいろいろレベルがあり、特定保健用食品は、国が有効性、安全性を審査して許可したものですが、機能性食品、栄養補助食品、健康補助食品などは国に申告はしているものの、審査や認可を受けたものではありませんので、安全かどうかはわからない。健康食品だから安心して服用できるという考えをお持ちの人がいれば、よく考えてほしいと思います。よく外来受診時に、「先生、こんな健康食品を服用していいですか?」と尋ねられることがあります。我々医師は、医薬品のことはわかりますが、健康食品についてはデータもないので、「わかりません」としか答えようがありません。

健康食品をすべて否定するつもりはありませんが、今回の紅麹事故は、健康食品についてよく考える必要があること、安全と安心の違いをよく考える必要があることを示してくれたと思います。繰り返して書きます。安全は客観的に科学が決める、安心は主観的に信頼感が決める。

 

2024年4月17日

公益財団法人 痛風・尿酸財団 理事長
医療法人財団順和会山王メディカルセンター院長
山中 寿

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