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痛風・尿酸ニュース

血液内科からみた痛風・高尿酸血症

山下 浩平(京都大学医学部附属病院 血液内科)

痛風・高尿酸血症は、高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病との関連がよく知られています。血液内科と痛風・高尿酸血症とは距離があるように思わるかもしれませんが、血液内科は核酸代謝を阻害する抗がん剤や抗微生物薬の使用、化学療法後にしばしば経験される腫瘍崩壊症候群などを通じて、この領域と深く関っています。

私は普段、白血病や悪性リンパ腫などの血液疾患患者を診ていますが、大学院時代に白血球、特に好中球や単球・マクロファージの研究を始めてから、痛風関節炎の病態に興味をもつようになりました。関節内の尿酸結晶がマクロファージを刺激して、マクロファージ内のNLRP3インフラマゾームの活性化を介して産生されるIL-1が、痛風関節炎の中心的役割を果たすことが報告され(Nature 2006)、痛風発症の分子レベルでの仕組みの理解が大きく進みました。

一方、血清尿酸値がそれほど高くなくとも痛風を発症する患者や、その逆に、尿酸値が高くても痛風をおこさない患者がいることに私は常々疑問を持っていました。最近、この問いの一つの答えとなる研究が報告されましたので、簡単にご紹介します。

加齢とともに、骨髄造血幹細胞のRNAスプライシングに関連する遺伝子(SRSF2, U2AF1など)やDNAメチル化に関連する遺伝子(TET2, IDH1/2など)などに変異が起こりますが、これらの遺伝子変異をもつ幹細胞が骨髄内で増殖すると造血不全に至って、骨髄異形成症候群(MDS)が発症することが知られるようになりました。そして、遺伝子変異を蓄積した細胞がさらに増殖すると急性骨髄性白血病(AML)へ進展します。

MDSやAMLには至らぬものの、遺伝子変異をもつ幹細胞が骨髄内で一定の割合をもつ状態を「クローン造血」と呼び、70歳以上ではクローン造血をもつ人の割合が10%以上に及びます。また、クローン造血をもつ人は心血管系疾患の発症が高いことが報告されました(NEJM 2017)。そしてごく最近、クローン造血と痛風との関連について、①DNAメチル化に関わる遺伝子であるTET2変異のクローン造血をもつ高尿酸血症患者では痛風関節炎の発症が有意に高いこと、②TET2ノックアウトマウスでは尿酸結晶の刺激によりNLRP3依存性のIL-1産生が亢進することが示され、TET2変異のクローン造血が痛風の発症リスク因子となる可能性が報告されました(Blood 2022)。これは、痛風発症の分子学的機序を基にして、尿酸結晶に対する反応性の個人差を明快に示した報告です。

このように、一見関係が薄いと思えるMDSやAMLと痛風との関連が明らかとなり、血液内科からみた痛風・高尿酸血症が益々面白くなってきました。今後も独自の視点から、痛風・高尿酸血症の診療や研究を継続していきたいと思います。

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