痛風・尿酸ニュース
美味しいものと痛風
水田 栄之助(独立行政法人労働者健康安全機構 山陰労災病院 循環器内科)
痛風は「ぜいたく病」とも言われ、「美味しいものを食べ過ぎると痛風になる」と言われている。しかし「美味しいものをたくさん食べる」ことは本当に健康に良くないことだろうか?
日本は世界有数の長寿国であり、2021年の日本人平均寿命は男性81.47歳、女性87.57歳であるが、介護を必要としないまでの期間を表す「健康寿命」は2018年の時点で男性72.68歳、女性75.38歳と未だ短い。言い換えると日本人は男女とも平均で約10年もの間、要介護状態を経てから死を迎える。従って「健康寿命の延伸」は国の最も重要な健康対策と考えられる。では寝たきりを予防するためにはどうしたら良いだろうか?それは「たくさん食べて運動する」ことである。75歳の後期高齢者を境にメタボ対策から寝たきり予防に切り替えることが重要であり、後期高齢者の食事摂取量、特に筋肉の原料となるタンパク質摂取を増やすことが大切である。
後期高齢者にたくさん食べてもらうための一つの手段として「うま味」を利用することが挙げられる。高尿酸血症・痛風研究者の間では「うま味成分を過剰に食べさせたマウスが肥満やメタボリック症候群のモデルマウスになる」ことがよく知られている。これを逆手に取り、うま味を料理に利かすことは食欲増進につながり寝たきり予防につながる可能性が考えられる。さらにうま味には塩味増強効果があり、減塩が必要な高血圧や慢性心不全がある後期高齢者にもうま味は有用と考えられる。
また味覚は「これから食べようとする食べものにどのような栄養素が含まれているか?」を検知する感覚と言われており、「うま味」は食べものにタンパク質が含まれていることを表す。東北大学の研究(Satoh-Kuriwada S, et al. PLoS One, 2014)によると、高齢者は5大基本味(甘味・塩味・うま味・苦味・酸味)の中で、特にうま味感度が鈍くなっていると言われており、うま味感度が鈍いとうま味で食の満足感が得られにくくなるため、高齢者は若い人に比べてタンパク質摂取量が低下し、さらに食べものを美味しいと感じにくくなっている可能性が考えられる。
以上より、人生100年時代を迎えるにあたり「美味しいものをたくさん食べる」ことを、痛風研究者は毛嫌いせずに再考する時期が来ているのではないだろうか?と考えている。
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