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痛風・尿酸ニュース

医薬品の開発〜薬が患者さんの手元に届くまで〜

大谷 直由(獨協医科大学日光医療センター循環器病センター/大分大学医学部臨床薬理学講座)

治験と臨床試験
医薬品は、ヒトの疾病の診断、治療、予防に使用され、人の身体の構造や機能への有用性が国から認められたものであるとされています。すなわち、診療で使用する薬剤は、すべて国から認められたものです。医薬品の開発には細胞や組織、動物を用いた基礎医学分野で得られた知見(非臨床試験)を十分に検討し、ヒトへの安全性と有効性が確認された後、臨床試験に移行します。医薬品の承認申請を目的とする臨床試験を「治験」と呼びます。一方、医薬品の承認申請を目的としないヒトを対象とした研究は「臨床試験」と呼びます。治験は、古典的には第一相試験から第三相試験へ進みます。承認後に第四相試験(製造販売後臨床試験)が行われます。第一相試験から第二相試験を早期探索的臨床試験、それ以降を検証的臨床試験と呼ぶこともあります。

第一相試験の主たる目的は、①安全性/忍容性の評価、②薬物動態/薬力学の評価です。非臨床試験から臨床試験に移行し、ヒトに投与する最初の試験をFirst in Human試験(FIH試験)と言います。FIH試験の被験者は健康な方が対象のため、安全性の確保は重要です。そのため、FIH試験の計画段階から非臨床試験のデータを適切に解釈し、ヒトにおける安全性の予測を行う必要があります。FIH試験では、被験者の安全を考慮し、薬効がでないぐらいの低容量から被験薬の投与を開始し、安全性を確認しつつ用量を漸増していく単回投与漸増デザイン(single ascending dose: SAD)を用います。この結果で安全性を確認したのち反復投与用量漸増(multiple ascending dose: MAD)試験に移行します。ほとんどの薬剤は臨床使用において繰り返し投与が前提となるためです。SADでは薬物吸収に及ぼす食事の影響の検討、MADでは高齢者や民族差、肝障害や腎障害のある患者での薬物動態・薬力学や薬効の探索なども行われることがあります。これらのデータを非臨床試験のデータと比較し、用量設定の推定を行い、第二相試験以降に推奨投与用量の決定を行い、治験計画を建てて行きます。

第二相試験の主たる目的は有効性のスクリーニングです。第一相試験の結果において安全性が確認された後、少数例の患者を対象として、薬効、投与量、投与方法、さらに適切な効果判定法などを探索するのがこの段階の試験です。第三相試験を行うための、対象となる患者集団、用法、評価項目(バイオマーカーを含む)を決定するための情報取得が挙げられます。すなわち、検証的臨床試験である第三相試験の治験計画の作成のための臨床試験であるとも考えられます。

第三相試験は、これまでの標準的な薬剤(標準治療)と新規の薬剤を比較して、新規薬剤が真に有効かどうかを検証する試験です。新規薬剤が薬事承認されるかどうかは標準治療と比較して新薬がどう有効であるか検証することが必要となります。高尿酸血症の新薬も次々と市場に登場していますが、このような流れで医薬品は開発され皆さんの手元に届いています。

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