痛風・尿酸ニュース
尿酸は善玉?悪玉?
藏城 雅文(大阪公立大学大学院医学研究科 講師)
尿酸は、抗酸化、酸化という相反する作用を有している。そのため、尿酸は善玉物質なのか悪玉物質なのかは議論が分かれているところである。
1)尿酸の酸化作用
血管平滑筋細胞において、尿酸は尿酸トランスポーターを介して細胞内に入り、MAP kinaseを活性化し、COX-2を増加させる。また核転写因子を活性化させ、続いてPDGFやMCP-1を増加させることが明らかになってきた。また高尿酸血症モデルマウスにおける検討でも、血清尿酸値と血圧が相関し、高尿酸血症によるNO産生の減少、血管収縮、レニンーアンジオテンシン系の活性化をもたらしていることが明らかになっている。高尿酸血症・痛風患者には高血圧、心血管障害、脂質異常症、肥満、メタボリック症候群、腎障害などの生活習慣病が多いことは以前より良く知られており、これらの疾患が生命予後に深く関わっていた。近年、高尿酸血症そのものが高血圧、心血管障害、脳血管障害、腎障害等を悪化させる要因ではないかと示唆されるようになり、尿酸の酸化促進作用が注目を集めている。検診受診者を対象に、血清尿酸値と酸化ストレス状況との関連性を調査したところ、血清尿酸値5-6mg/dLを超えると酸化ストレスが高値になることが明らかとなった(Kurajoh et al. Sci Rep. 2021;11:7378)。
2)尿酸の抗酸化作用
基礎的研究では尿酸には、ペルオキシナイトライトや一重項酸素などの活性酸素を除去する作用が認められ、たんぱく質や脂質を含んだ、あらゆる細胞の構成物の酸化を防ぐ、代表的な抗酸化剤の一つとして捉えられている。ヒトでは尿酸酸化作用をもったウリカーゼが存在しないため、ウリカーゼによるアラントインの産生は認めない。しかし、尿酸は活性酸素によっても酸化されるため、少量のアラントインが血中に存在する。我々は血中に存在するアラントインが尿酸値と正の相関を示すことを示した(Kurajoh et al. Int J Clin Pharmacol Ther. 2012;50:265-71)。疫学研究からも血清尿酸値が低下した群では心血管事故が有意に増加するという報告、血清尿酸値が高いほどパーキンソン病発症頻度が低いという報告、多発性硬化症患者へのイノシンの投与が疾患活動性の改善をもたらしたという報告、腎性低尿酸血症患者では運動後急性腎不全の発症が多いという報告があり、尿酸の抗酸化作用を示唆しているものと考えられている。最近では、血清尿酸値とCOVID-19の重症化が負の関連性(尿酸値が低いほど重症化率が高い)が報告されており、尿酸による抗酸化作用を示している可能性がある。
尿酸研究は進化しているが、尿酸は善玉?悪玉?に関する結論は出ていない。
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