痛風・尿酸ニュース

運動療法を始めよう!

大山 博司(両国東口クリニック 理事長)

両国東口クリニックは、「T’s Energy」を2013年にメディカルフィットネスとして開設しました。当院は、痛風・高尿酸血症専門外来を中心としていますが、糖尿病、慢性腎臓病、リウマチ、循環器の専門外来も行っています。また、同じ医療法人が開設するつばさクリニックでは維持透析を行っています。

痛風・高尿酸血症患者はメタボリックシンドロームや予備軍の方が多く、根本的な改善には、生活習慣の改善が必要であると考えます。また慢性腎臓病保存期患者も身体活動量の低下が死亡や生活の質(QOL)の低下と関連することが明らかとなり運動療法が有益とされています。さらに維持透析患者ではフレイルやサルコペニアが生命予後やQOLに影響を及ぼすことから運動療法を行うことにより運動耐容能、QOL、身体機能が改善することが明らかになりました。

「減量のため適度な運動をしてください」などと、外来診察時にお話しますが、それで運動ができる方は一握りです。運動や食生活の改善が必要であることはわかっていても、自分1人では、なかなかできないものです。 また自己流では、「思うように成果が出ずかえって腰や関節に痛みが出てしまった」そんな声を多く聞くことがありました。 医師だけではなく、運動の専門家と栄養の専門家が連携して、サポートすることができれば、多くの方の健康寿命を延ばすことができるのではないか。そんな想いのもと、医学的に正しい知識によるサポートができる施設を作ろうと生まれたのが、「T’s Energy」です。

さて、運動はアデノシン三リン酸(ATP)分解による尿酸産生亢進と腎血流量低下および乳酸産生増加による尿酸排泄低下の両方により高尿酸血症をきたすとされており痛風・高尿酸血症患者に対しては高強度の運動は推奨されていません。しかし、持続的収縮を示す赤筋では虚血状態にならない限り運動によるATPの分解はおこりにくく、ごく軽いジョギングに相当すると考えられる嫌気性代謝域値(anaerobic threshold:AT)を超えない強度の運動では、血清尿酸値の上昇は認められないとされています。ATを超えない運動強度は自覚的運動強度指数では「楽である」程度とされていますが、ATは個々人で異なるため「T’s Energy」では、心肺運動負荷試験(CPX)によりATを測定して運動強度を設定しています。一方でダンベルなどの重りや重りが組み込まれている機器、自重などで筋肉に抵抗を与え筋力、筋持久力などの筋機能を高めるレジスタンス運動は、血清尿酸値の上昇を伴うため痛風・高尿酸血症患者には控えるとされていましたが、糖尿病患者に推奨される低強度のレジスタンス運動では、血清尿酸値の変化は有酸素運動と同程度とされることから一律に控えるように指導すべきではないと考えます。

9年前から私たちが取り組んできた維持透析患者に対する透析中運動療法については、つばさクリニックの大山恵子を大会長として2022年1月31日に両国にて第12回透析運動療法研究会が開催され有意義な討議が行われ、4月の診療報酬改訂では透析中の運動療法を行った際に算定できる「透析時運動指導加算」が収載されました。今後も診療の柱の一つとして運動療法に取り組んでいきたいと考えています。

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