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尿酸排泄指標の基準範囲と臨床判断値 – 使いやすい方法を求めて

津谷 寛(国立病院機構あわら病院 院長)

私たちは、2014年から2016年にかけて国立病院機構EBM研究として「わが国における尿酸排泄動態に関する基準範囲の検討(Reference Interval of Clearance and Excretion of Urate:RICEU)」を実施し、尿酸排泄指標の課題について検討する機会が得られました。解析は牛歩のごとくでしたが、ようやく全ての結果が揃ってきましたので、ここで少し紹介したいと思います。

高尿酸血症の病態理解には、腎における尿酸排泄の把握が重要ですが、これにはいくつかの課題がありました。まず、①尿酸排泄指標の基準範囲がないことです。尿を検体としていますので、24時間にわたり正確な蓄尿ができる被験者を多数リクルートしないと、信頼性の高い基準範囲の設定できません。次に、②簡易尿酸排泄動指標は何が良いかわからないことが挙げられます。60分間蓄尿を用いた尿酸クリアランス値(Cua)や尿中尿酸排泄量(Eua)、スポット尿を用いた尿酸排泄率(Cua/Ccr)、尿中尿酸クレアチニン比(Uua/Ucr)などの簡易指標と、基本となる24時間蓄尿を用いたCuaやEuaとの相関性が明らかではありません。さらに、③尿酸排泄低下の臨床判断値として健常者の基準範囲から求めた数値を用いていることも問題でした。

RICEU研究はこれらの課題を解決するために、国立病院機構の職員を中心に屋内勤務者約1000名を募り、米国臨床検査標準委員会の方法に従い実施しています。基準範囲の設定では、Cuaは排泄効率が高い健常人が含まれるために正規分布でないこと、女性において閉経や女性ホルモンと尿酸排泄の関連性がみられないことなどの知見を経て、男女別の尿中尿酸排泄動態基準範囲を求めました。また、24時間蓄尿をスポット尿や60分間蓄尿と同期して測定した結果、24時間蓄尿によるCuaやEuaは60分間蓄尿をもとにしたCuaやEuaとの相関性が最も高いことがわかり、それらに匹敵するスポット尿での推算指標値eCua、eEuaを尿酸排泄動態の新しいマーカーとして提唱しています。さらに、高尿酸血症では尿酸排泄低下例が多いことから、血清尿酸値7.0mg/dL以上を示す例を判別するために、24時間蓄尿と60分蓄尿でのCua、スポット尿でのCua/Ccrのカットオフ値を求め、従来提唱されていた診断値と近似した値が得られています。

余談ながら、60分蓄尿でのCuaが私の師匠である故・中村徹先生が求めた値にほぼ一致していることを確認できた時には感慨深い気持ちとなりました。私たちが求めた指標の数字が尿酸排泄量の推定や栄養指導など高尿酸血症の日常診療に役立つことを希望するところです。
 

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