HOME » 痛風と尿酸について知りたい方へ » 痛風・尿酸ニュース » 痛風専門クリニックに転職して思うこと

痛風・尿酸ニュース

痛風専門クリニックに転職して思うこと

藤森 新(両国東口クリニック 名誉院長)

長年、大学附属病院や大学附属健診センターなどで痛風を始めとした代謝性疾患の診療に携わってまいりましたが、2021年4月から痛風専門診療所である両国東口クリニックに常勤医として週4日勤務するようになりました。当クリニックは理事長の大山博司先生が早くから痛風専門の医療機関として立ち上げ、痛風に関する知識啓蒙を目的としたメーリングリストやオンライン診療などITを活用した痛風診療を続け、メディアに登場することも多いことなどから、近隣の患者のみならず全国各地から痛風患者が殺到しています。受診歴のある痛風患者は開設以来30、000人を超え、現在も年間3、000人以上の痛風患者が通院を続けています。尿酸降下治療を継続している痛風患者に加えて、痛風発作をきたして足を引きずりながら訪れる新規患者も多く、多い時には1日に10人近い痛風発作の初診患者を診療しています。大学病院でも数百人の痛風患者の診療にあたっていましたが、新規の痛風発作で受診する患者を診療する機会は月に数人もおらず、当院に移ってからは「よくもこれだけの痛風患者がいたものだ」と驚くことが率直な感想です。

当クリニックでは初診患者にはあらかじめクリアランス検査を実施して病型を調べてから尿酸降下薬の適応を決めて診療にあたっています。ガイドラインに記載されている通り、痛風患者は尿酸排泄低下型が多いこともあって、尿酸排泄促進薬を投与する頻度が高い傾向にあります。これまでのベンズブロマロンに替わって、新規尿酸降下薬のドチヌラドの使用が増加しており、8月現在当院では400例を超える患者にドチヌラドが使用されています。私が対応している新規患者においても、同薬の長期投与が可能となった5月から8月までの4か月間で100例を超える患者に投与しています。痛風発作の誘発防止の目的で初期投与は0.5mgで開始しており、多くの患者では血清尿酸値低下率は20%程度ですが、中には30%以上の低下率を認めて初期投与量の0.5mgでも治療目標値の6mg/dl以下を達成できる患者が少なからず存在します。これだけの患者に接していると健診で高尿酸血症(>7mg/dl)を指摘されていない患者でも痛風発作をきたすことを経験することがあります。このような患者には関節エコー検査で尿酸塩結晶の存在を確認してから尿酸降下治療の適応を決定しています。また、尿酸降下治療の導入に伴う痛風発作の誘発がかなりの頻度で見られることからコルヒチンカバーの併用を迷うことなく適応して効果を挙げています。痛風発作に対する治療薬としてはロキソプロフェンで対応できる患者も存在する一方、プラノプロフェン、ナプロキセン、ジクロフェナック、セレコキシブなど患者によって有効な鎮痛薬が異なることを経験しますが、ステロイドに関しては多くの患者が発作治療に有効であることを認めています。

当院での使用頻度の高い尿酸降下作用を有する脂質異常治療薬のフェノフィブラートにおける腎機能低下について、今年2月の日本痛風・尿酸核酸学会で報告し、学会誌に投稿しましたが(痛風と尿酸・核酸45:49-59,2021)、今後も痛風治療の実臨床で感じることについて報告していく所存ですのでよろしくお願いいたします。

HOME » 痛風と尿酸について知りたい方へ » 痛風・尿酸ニュース » 痛風専門クリニックに転職して思うこと

PageTop