痛風・尿酸ニュース

2020年の夏を迎えて

金子 希代子(日本痛風・尿酸核酸学会 理事長/帝京大学薬学部臨床分析学研究室 教授)

2020年も早や半年が過ぎました。新型コロナウイルス感染症の拡大を予防するため4月に緊急事態宣言が出され、外出自粛で生活必需品以外の買い物や外食ができず多くの方が自宅で過ごしたと思います。2ヶ月後に緊急事態宣言は解除され、遊園地や飲食店が再開し始めましたが、7月現在、東京ではまた感染者が増え始めている状況です。

私が勤める首都圏の大学でも、今も学生は10%程度しか登校できず、当分元の状態には戻りそうもありません。大学内で感染が起こらないように、講義は自宅でのオンライン講義を中心に進められており、実習など最低限の実技カリキュラムのみを、大学に登校して実施しています。私は初めてオンライン講義を経験して、パワーポイントでわかりやすい資料を作ることの大変さを実感しました。今までの講義では黒板を使って書きながら説明していましたが、それをパワーポイントにすると、いかに多くの情報を1コマの講義で話していたかがわかりました。学生は、配信されたパワーポイントによる資料と教科書、同じく配信されたプリントを見て、自分で勉強しています。自宅に WiFi 環境と自分が使えるパソコンが必要で、それがないとオンライン講義が受けられません。また、講義を聞いたかどうか、理解が進んだかどうかを調べるために、毎回のオンライン講義で小テストを実施して、リアルタイムで講義の視聴状況と小テストでの成績を確認します。1学年300人前後在籍していますが、視聴していないのは数名から十数名であり、オンライン講義でも、学生は真面目に勉学に取り組んでいます。国家試験を来年2月に受験予定の学年では、小テスト開始1分後に100名以上が小テストに取り組んでいて、自宅での学習でも効果が上がることを願うばかりです。

緊急事態宣言の下、自宅で過ごしていると、どうしても食べ過ぎ、飲み過ぎ、運動不足にならなかったでしょうか?痛風・高尿酸血症は、これらの生活習慣と関連があります。

太っているほど(ボディマス指数(BMI)が高いほど)血清尿酸値が高いことがわかっています。目標とするBMIは、18〜49歳では18.5〜24.9 kg/m2、50〜69歳では20.0〜24.9 kg/m2、70歳以上では21.5〜24.9 kg/m2です。高齢になるほど目標BMIの下限値が上がるのは、高齢者では低栄養が問題となるためです。「小太りが長生き」と言うと覚えやすいと思います。あくまでも「小太り」で本物の「太り」(=BMI 25.0以上)ではありません。

また、アルコール飲料や果糖(フルクトース)を含む飲料、プリン体の多い食品は尿酸値を上げます。アルコール飲料の適量は、1日に、日本酒1合、ビール350〜500mL、ウィスキー60mLのいずれかです。アルコール成分そのものに尿酸値を上げる作用がありますので、飲み過ぎないことが大切です。果糖(フルクトース)を含む飲料とは、甘い果物ジュースや清涼飲料水のことを指し、2—3日にペットボトル1本が勧められる量です。水分を多くとると尿酸の排泄を助けるので、甘い飲み物ではなく、水や麦茶などを多くとるようにすると良いと思います。プリン体の多い食品として、レバー、白子、エビ、イワシ、カツオなどがあります。これらは食べ過ぎないようにして、バランスよく、肉や魚、野菜、きのこ、海藻、そして乳製品などを摂りましょう。乳製品は血清尿酸値を下げることがわかっています。

『バランスの良い食事』とは、定食のような、ご飯、パンなどの主食、肉・魚などの主菜(メインのおかず)、野菜、海藻などの副菜(小さいお皿のおかず)、これに汁物を加えた一汁二菜、一汁三菜になります。副菜にはいろんな食品を使うのが良いとされています。『まごこわやさしいよ』(ま:豆、ご:ゴマ、こ:米、わ:わかめ(海藻)、や:野菜、さ:魚、し:しいたけ(きのこ)、い:芋、よ:ヨーグルト(発酵食品))と言う言葉がありますが、これらの食品を摂ることは、栄養素のバランスが良く病気を予防するだけでなく、老化予防(アンチエイジング)の効果もあります。

適度な運動も尿酸値を下げます。軽いジョギングやサイクリングなどの有酸素運動が推奨されています。前後の人との距離は、ジョギングで5メートル以上とるようにするのが勧められます(コロナウィルス感染予防)。生活習慣病予防のための歩数としては、男性で9000歩/日、女性で8000歩/日が目安です。

コロナウィルス感染症のため、今までとは違う夏を迎えていますが、できるだけ身体活動量を増やして、バランスの良い食事を摂り、痛風・高尿酸血症だけでなく、他の生活習慣病も予防していただきたいと思います。

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