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研究成果

2020年度研究助成成果

当財団が2020年度に行った研究助成の成果である論文リスト・概要報告を掲載します。

【痛風財団研究助成】

鶴田 文憲
筑波大学 生命環境系 助教
【研究テーマ】
プリンヌクレオチド代謝による発達過程ミクログリアの形質制御
- HPRT1 変異はなぜレッシュナイハン症候群になるか? -

【共同研究者】岡島 智美、照屋 林一郎

【研究成果】
<論文(総説)>
Exploring genes that control microglial heterogeneity and transition
Okajima T, Tsuruta F* (*corresponding)
Neural Regen. Res. 16:2397-2398 (2021)
(本課題の基盤研究Okajima T et al. eNeuro 2020のミニレビューです)

<学会発表>
プリン代謝経路はHPRTの発現調節によってミクログリアの形質を制御する
照屋林一郎、岡島智美、千葉智樹、鶴田文憲 
第44回日本神経科学大会 2021/7/28-2021/7/31 神戸コンベンションセンター

HPRTの発現調節を介した新たなミクログリアの形態変化メカニズムの解明
照屋林一郎、岡島智美、千葉智樹、鶴田文憲
第44回日本分子生物学会 2021/12/1-2021/12/3 パシフィコ横浜

榊原 伸一
早稲田大学・人間科学学術院 教授
【研究テーマ】
プリノソーム形成を制御する新たな因子Nwd1 を介するプリン代謝調節機構の解明

【共同研究者】山田 晴也

【概要報告】
真核生物では外部環境変化や代謝産物の需要に応じて,連続的な代謝経路を構成する酵素群がお互いに離合集散する多酵素タンパク質複合体“メタボロン”を形成し,代謝機能の円滑化・高効率化がしているのではないか,と予想されるが,その実態や誘導のメカニズムはほとんど不明である。最近,プリン(purine)のde novo生合成経路に寄与するメタボロンとしてプリノソーム(purinosome)の存在が提唱された。正常な組織の発生・分化,細胞の増殖やがん化にとって,プリン新生をコントロールするプリノソームの形成と解離,動的な細胞内トラフィッキング制御は普遍的で重要な役割を持つと考えられるが,その分子メカニズムは不明である。我々が同定したNwd1遺伝子は,神経幹細胞で豊富に発現し,プリノソーム形成に関与することで増殖・分化を制御する。本研究ではプリノソーム形成におけるNwd1の役割をNwd1 KOマウスを利用して解明することを目的とする。我々は,Nwd1がプリン新生酵素Paics (Phosphoribo-sylaminoimidazole Carboxylase)と直接結合してプリノソーム形成を誘導することで,神経幹細胞の増殖・分化・細胞移動をコントロールする可能性を見出した。神経幹細胞でNwd1発現をRNAiで抑制するとプリノソーム形成が抑制され,胎生期のマウス大脳皮質でNwd1遺伝子を発現抑制すると,神経幹細胞の分化異常と細胞移動障害による脳形成異常が引き起こされた。本年はさらにプリノソーム形成を誘導するシグナル分子(リガンド)がNwd1のC末端側WD40ドメインに結合すると推定し,Nwd1強制発現細胞の免疫沈降・LC/MSによるスクリーニングを行い,Nwd1のリガンド候補としてATP産生に関与するタンパク質など複数のNwd1結合タンパク質の同定に成功した(未発表)。さらに免疫電顕観察の結果,Nwd1やPaicsはミトコンドリア内に多く存在する事が示唆された(未発表)。
以下略

学会発表
・Seiya Yamada, Ayaka Sato, and Shin-ichi Sakakibara.
Nwd1 adjusts purinosome formation during cortical development.
The 44th Annual Meeting of the Japan Neuroscience Society/The 1st CJK International Meeting, 2021年7月神戸国際会議場

・Seiya Yamada, Ayaka Sato, and Shin-ichi Sakakibara.
Nwd1 and Purinosome regulates neural differentiation.
第44回日本分子生物学会年会, 2021年12月. パシフィコ横浜

安西 尚彦
千葉大学大学院医学研究院 教授
【研究テーマ】
尿酸・有機酸トランスポーターMCT9 (SLC16A9)の細胞内結合タンパク質同定と輸送機能制御機構解明

【共同研究者】橋本 弘史、平山 友里、霊園 良恵、北村 里衣

【論文】
Hypouricemia and Urate Transporter
Naoyuki Otani, Motoshi Ouchi, Kazuharu Misawa, Ichiro Hisatome and Naohiko Anzai
Biomedicines 2022, 10(3), 652; https://doi.org/10.3390/biomedicines10030652

寺尾 知可史
国立研究開発法人理化学研究所生命医科学研究センターゲノム解析応用研究チーム チームリーダー
【研究テーマ】
日本人特異的尿酸レベル決定遺伝子多型とエンハンサー発現

【共同研究者】村川 泰裕

【概要報告】
1.研究の背景
尿酸血中濃度の理解には関連遺伝因子多型を同定することが大きな助けとなる。全ゲノム関連解析(GWAS)は関連多型の同定を通して複雑形質の病態解明に役立っているが、大多数のGWAS多型は非コード領域にあり遺伝子発現調節を介して形質に関連していると想定される。近年、関連多型の影響は、遺伝子発現を調節する機能領域であり、それ自身も転写されるエンハンサーの発現の変化を介している可能性が強くなっている(Fulco Nat Genet 2019など)。

2.研究の目的
日本人特異的な多型を含む尿酸濃度関連遺伝多型を絞り込み、エンハンサー地図と結びつけ、特に関連の強い細胞種において精密なエンハンサー地図を新規作成し、尿酸濃度決定多型を同定し、どの遺伝子-エンハンサーが重要であるかを決定、尿酸濃度規定遺伝機構の全容解明に挑む。(略)
5.今後
日本人に特異性の高い多型を含め、尿酸レベルに関わる多型を11以上同定した。シングルセルレベルでのエンハンサー地図を作成すべく今後も研究を継続する予定である。各種細胞のエンハンサーを統合し、尿酸レベル決定の責任細胞を同定したい。

久留 一郎
鳥取大学医学部ゲノム再生医療学講座(再生医療学分野)教授
【研究テーマ】
尿酸塩結晶によるマクロファージにおけるインフラマソームの新たな活性化機構の解明

【共同研究者】李 ぺいり、經遠 智一、野津 智美

【論文】
Kv1.5 potassium channel is required for NLRP3 inflammasome activation induced by monosodium urate crystals
Peili Li, Fikri Taufiq, Yasutaka Kurata, Masanari Kuwabara, Haruaki Ninomiya, Katsumi Higaki, Motokazu Tsuneto, Yasuaki Shirayoshi, Kazuhiro Yamamoto, Miguel A Lanaspa and Ichiro Hisatome

内村 幸平
山梨大学大学院総合研究部医学域 助教
【研究テーマ】
ヒトiPS由来腎臓オルガノイドを用いた高尿酸腎障害モデルの確立

【共同研究者】玉井 望雅

【概要報告・論文】
私たちは既報を基にヒトiPS細胞から腎臓オルガノイドを作製しscRNA- seqによる解析を行ったところ、①後腎間葉に由来するネフロン(糸球体―近位尿細管一遠位尿細管)構成細胞は存在するものの、尿管芽から発生する集合管細胞は検出できない、②成人腎と比較し、糸球体細胞以外は分化が未熟であることを明らかにした(Cell Stem Cell. Dec 6:23(6):869-881 2018)。そこで、腎臓オルガノイドを病態モデルやドラッグスクリーニング等の医療応用へ発展させるためにはこれらの問題を克服する必要があると考え、新規腎臓オルガノイドの誘導法を開発した。新たに開発した腎臓オルガノイドは腎毒性抗がん剤のシスプラチンで処理すると急性腎障害(AKI)マーカーのKIM-1やNGALが発現誘導されることを確認した(Cell Rep. 2020 Dec 15:33(11):108514.doi:10.1016)。すなわち新規腎臓オルガノイドはヒトのAKIを模倣することが出来るため、尿酸による直接的な腎臓構成細胞への影響について観察する計画であった。しかし、COVID-19パンデミックの影響によリヒトiPS細胞の分与や使用する細胞株に対する分化誘導法の微調整に想像以上の時間を要したため、腎臓オルガノイドを高尿酸血症病態モデルとして用いた結果については未だ提示するに至っていない。

英文原著(筆頭またはCorrespondence)
1. Human Pluripotent Stem Cel-Derived Kidney Organoids with lmproved Collecting Duct Maturation and lnjury Modeling Uchimura K, Wu H, Yoshimura Y, Humphreys BD. Cell Rep.
2020 Dec 15;33(11): 108514. doi:10.1016
学会発表(海外国内を含む,筆頭発表に限る)
Improved Human Pluripotent Stem Cell-Derived Kidney Organoids for Modeling
Collecting Duct Biology and Tubular Injury. Kohei Uchimura, Haojia Wu, Benjamin D.
Humphreys第63 回日本腎臓学会学術総会2020

井上 浩一
名古屋市立大学大学院医学研究科准教授
【研究テーマ】
尿管細胞を標的とした尿酸誘導性ナトリウム再吸収の分子基盤の解明と高尿酸依存性高血圧の予測因子の探索

【共同研究者】植木 孝俊

【概要報告】
はじめに
高尿酸血症は、高血圧や動脈硬化など心血管疾患を促進するが、その分子機構はいまだ不明な点が多い。近年、尿酸が腎集合管においてリン酸化酵素SGK1 の発現上昇を促し、SGK1 の標的分子であるナトリウムチャネルENaC の活性上昇を介して生体内へのNa+貯留を増強することが報告された(Wu et al. 2016 Metabolism)。SGK1 は血圧に関与するため、この分子病理の解明は高尿酸血症と高血圧の相関の要因として重要であると考えられる。本研究では、尿酸による尿管細胞でのSGK1 発現上昇の分子機構の解明を試みた。

研究結果
・培養細胞を用いた検討
まず既に入手済のウサギの近位尿細管細胞PST-S2 細胞を用い、尿酸投与時のSGK1の発現を検討した。Wu らの論文では尿酸濃度依存的なSGK1 の発現が報告されたが、我々の実験(ウェスタンブロット)では尿酸によるSGK1 の発現上昇は認められなかった。上述のWu らの論文の条件(培養液中への血清など補助液の無添加)以外にも血清を加えた場合や尿酸の濃度(最大10 mg/dL)を変えた場合など、いくつか条件を変えて発現を検討したが、いずれの場合も発現は見られなかった。それゆえ、次に、マウスの尿細管細胞であるM-1 CCD 細胞を入手し、同様の尿酸刺激を行った。ウェスタンブロットによるSGK1 蛋白の検出に加え、定量的PCR を行いSGK1 の検出を試みたが、いずれの場合もSGK1 の発現は認められなかった(ポジティブコントロールとしてのデキサメタゾンでのSGK1 発現誘導は見られた)。
・生体モデルを用いた検討
Wu らの論文では生体においても高尿酸によるSGK1 の発現を検出しており、同様の実験を試みた。まず成体マウスにオキソニン酸を4 日間連続で腹腔内投与し、高尿酸血症モデルマウスを作製した(コントロール: 1.82±0.03 mg/dL vs オキソニン酸: 1.97±0.04mg/dL, p<0.05)。これらのマウスの腎標本を作製し、SGK1 抗体を用いて免疫組織化学を行った。しかしながら、尿細管組織において、SGK1 の発現に明らかな相違は見られなかった。
以下略

岡本 研
東京大学 特任研究員
【研究テーマ】
低酸素ストレスに対する抗痛風薬と、サルベージ経路、denovo経路代謝物添加効果

【概要報告】
1. 研究概要
低酸素ストレス時にenergy chargeを維持するためにプリン分解が進み、尿酸の放出が起こる。キサンチン、尿酸はATPへと戻る経路がないため、細胞がATPを維持するためにはde novo経路によりプリン環の新規合成を行うが、これは多くのエネルギーを消費する効率の悪い経路である。抗痛風薬であるアロプリノール、フェブキソスタットはXORによる尿酸産生を阻害するだけでなく、その一段階前のヒポキサンチンがキサンチンへと代謝される過程をも阻害する。蓄積したヒポキサンチンはサルベージ酵素であるHPRTにより効率的にATPへと戻される可能性がある。

2. 現在までの進捗状況
本研究では0.5%酸素存在下でマウス平滑筋培養細胞に低酸素ストレスを与え、ATPの低下と分解物である尿酸の増加を確認した。XOR阻害剤であるアロプリノール、フェブゾスタット添加により、低酸素におけるATPの減少を抑制することができた。さらに培地にヒポキサンチンを添加することでこの効果を増強する事ができた。

3. 研究のまとめ・展望
抗痛風剤によるプリン異化の阻害により、低酸素ストレスによるATP低下を部分的に防ぐことができた。今後は種々の臓器由来の細胞を用い、同様の検討を続けたい。

永森 收志
東京慈恵会医科大学准教授
【研究テーマ】
ヒト腎近位尿細管一細胞遺伝子発現解析に基づく尿酸輸送モデルの高解像度化と新規尿酸輸送体の同定

【共同研究者】Wiriyasermkul Pattama、Kongpracha Pornparn、森 英一郎、坂口 義彦

【概要報告】
ヒトの血中尿酸値の維持には、腎近位尿細管における尿酸輸送が大きく寄与する。この尿酸輸送には、最初に同定された尿酸輸送体URAT1を皮切りにGLUT9、NPT1などの輸送体の寄与が提唱され、複数経路の存在が裏付けられつつある。一方で、申請者らはヒト腎snRNA- seq(single nucleus RNA sequencing)データの解析から、これらの尿酸輸送体が同一の細胞に共発現していないことを見いだし、1細胞核遺伝子発現解析結果に基づく尿細管尿酸輸送システムのモデル構築を行った。公開データベースのsnRNA- seqデータ(GSE118184、GSE131882)からヒト成人男性3人のデータを取得した。8種類の既知の尿酸輸送体の発現を抽出し、輸送の方向性によって以下のように分類した。
1. AI(Apical- Influx)輸送体: URAT1、OAT4
2. AE(Apical- Efflux)輸送体: NPT1、NPT4
3. BI(Basolateral- Influx)輸送体: OAT1、OAT2、OAT3
4. BE(Basolateral- Efflux)輸送体: GLUT9
(略)
この遺伝子発現解析結果とモデルについての論文については、投稿準備中である(Sakaguchi et al. in preparation)。また、今回の解析結果から、特に細胞群2と4には未知の尿酸輸送体が存在することが示唆された。そこで、これらの細胞群の遺伝子発現情報に加え、タンパク質分子発現情報を取得することで新規尿酸輸送体候補の探索を実施した。膜タンパク質分子の網羅的検出は容易ではないため、新たに膜タンパク質に特化した膜プロテオーム解析手法を開発した(Kongpracha et al. 2022)。この手法により、輸送体のような複数回膜貫通部位を持つタンパク質分子の検出感度が格段に上昇した。現在、候補分子の同定と解析を進めている。

論文、学会発表
査読論文
1. Kongpracha P, Wiriyasermkul P, Isozumi N, Moriyama S, Kanai Y, and Nagamori S.
Simple but efficacious enrichment of integral membrane proteins and their interactios for in-depth membrane proteomics. Mol Cell Proteomics, Jan 24, 2022. doi:10.1016/j.mcpro.2022.100206.
Corresponding author
学会発表
1. 坂口義彦、永森收志、森英一朗 「細胞分解能から覗くヒト腎尿酸排泄動態」
第64回日本神経化学会大会、2021年10月1日、奈良(オンライン)
2. 永森收志 東京慈恵会医科大学 総合医科学研究センター 産学連携セミナー 「質量分析計を用いた多階層生体システム研究」2021年3月17日、東京(ハイブリッド)

Nicholas F. Parrish
理化学研究所 生命医科学研究センターチームリーダー
【研究テーマ】
ゲノム転移因子由来のゲノム構造多型が引き起こす尿酸値異常: 20万人の日本人ゲノムを用いたゲノムワイド関連解析

【共同研究者】伊藤 薫、小山 智史、小嶋 将平

【概要報告】
研究の背景と目的
構造多型は一塩基多型(SNV)と比較し周辺遺伝子の発現や表現型に10から100倍程度強く影響する。しかしSNVと異なり、構造多型を標的としたゲノムワイド関連解析(GWAS)はほとんど行われていない。理由として構造多型を正確に検出できるツールがないことが挙げられる。この問題を解決するため、我々は構造多型の25%を占める転移因子の挿入多型(Mobile Element)を正確に検出するソフトウェアを開発した。本法を欧米人に適用しGWAS を行った結果、尿酸値と転移因子との間に統計的関連が示唆され、日本人への応用が期待された。そこで、尿酸値や関連する疾患と遺伝統計的関連を示す転移因子を日本人ゲノムから探索、その影響を明らかにすることを目的とした。
研究の進捗まとめ
本研究では、尿酸値や尿路結石と関連を示す転移因子挿入多型の同定に成功した。特定した多型の一つは東アジアに特異的な挿入であり、日本人における研究の重要性を示すものとなった。本研究成果は来年度に論文として出版予定である。以下は進捗の概要である。
① 1235人の全ゲノム解析の結果、日本人における転移因子の挿入多型の全容を明らかとした。
② 日本人18万人における関連解析により、尿路結石と関連する東アジア特異的な転移因子挿入を特定した。
③ 尿酸値GWASを行い、尿酸値と関連する転移因子挿入を発見した。
④ 現在、細胞生物学実験を用い、転移因子挿入が尿酸値に与える影響を解析中である。
以下略

高田 龍平
東京大学医学部附属病院薬剤部 講師/第一副部長
【研究テーマ】
新規尿酸トランスポーターと血清尿酸値変動薬に関する研究

【論文】
1) Increase of serum uric acid levels associated with APOE ε2 haplotype: a clinico-genetic investigation and in vivo approach.
Ogura M, Toyoda Y, Sakiyama M, Kawamura Y, Nakayama A, Yamanashi Y, Takada T, Shimizu S, Higashino T, Nakajima M, Naito M, Hishida A, Kawai S, Okada R, Sasaki M, Ayaori M, Suzuki H, Takata K, Ikewaki K, Harada-Shiba M, Shinomiya N, Matsuo H.
Hum Cell. 2021 Nov;34(6):1727-1733.
2) Substantial anti-gout effect conferred by common and rare dysfunctional variants of URAT1/SLC22A12.
Toyoda Y, Kawamura Y, Nakayama A, Nakaoka H, Higashino T, Shimizu S, Ooyama H, Morimoto K, Uchida N, Shigesawa R, Takeuchi K, Inoue I, Ichida K, Suzuki H, Shinomiya N, Takada T, Matsuo H.
Rheumatology (Oxford). 2021 Nov 3;60(11):5224-5232.

関根 舞
東京薬科大学薬学部助教
【研究テーマ】
ヒト脳組織のプリン代謝解析

【共同研究者】西野 武士

【研究成果】
国内学会・シンポジウム等における発表
1. 綿引優帆, 小野義道, 関根千広, 関根舞, 細山田真, 市田公美, 「疾患特異的iPS細胞を用いたLesch-Nyhan症候群の病態解析」, 第55回日本痛風・尿酸核酸学会総会, オンライン開催, 2022年2月, 口頭発表(査読なし)
2. 小板橋慧, 関根舞, 市田公美, 西野武士, 「高尿酸血症モデルにおけるオキシプリノール単独投与の効果」, 第55回日本痛風・尿酸核酸学会総会, オンライン開催, 2022年2月, ポスター発表(査読なし)
3. 関根舞, 寳島七海, 市田公美, 西野武士, 「キサンチン酸化還元酵素に対するオキシプリノールの親和性は低い」, 第55回日本痛風・尿酸核酸学会総会, オンライン開催, 2022年2月, ポスター発表(査読なし)
4. 綿引優帆, 小野義道, 関根千広, 関根舞, 細山田真, 市田公美, 「Lesch-Nyhan症候群患者由来iPS細胞を用いたプリン代謝解析」, 第142年会日本薬学会, オンライン開催, 2022年3月, ポスター発表(査読なし)
5. 寳島七海, 小板橋慧, 関根舞, 市田公美, 西野武士, 「オキシプリノールの阻害機構と生体内における尿酸生成抑制効果」, 第142年会日本薬学会, オンライン開催, 2022年3月, ポスター発表(査読なし)

学術雑誌等又は商業誌における総説
1. 関根舞, 市田公美, “キサンチンオキシダーゼ阻害薬”, 腎と透析, 第90巻第5号, 786-791, 2021年5月
2. Sekine M, Okamoto K, Ichida K. Association of Mutations Identified in Xanthinuria with the Function and Inhibition Mechanism of Xanthine Oxidoreductase. Biomedicines. 2021; 9(11):1723.

四ノ宮成祥
防衛医科大学校防衛医学研究センター長/分子生体制御学講座教授
【研究テーマ】
腎性低尿酸血症診療ガイドライン改訂に向けた臨床遺伝学的解析

【共同研究者】松尾 洋孝、市田 公美

【概要報告】
【研究の背景】
腎性低尿酸血症は、腎における尿酸再吸収不全により引き起こされ、「腎からの尿中尿酸排泄率の亢進(正常値: 5.5~11.1%)」と「血清尿酸値の低値(正常値: 3.1~7.0 mg/dL)」を特徴とする遺伝性疾患である。世界的には稀少疾患であるが、日本人には比較的多く、人口の0.3%に上ると推定されてきた。
申請者は日本痛風・尿酸核酸学会と共同編集し、策定委員長として、世界初・日本発の『腎性低尿酸血症診療ガイドライン(第1版)』を2017年に策定した。その際に「日本人の一般集団における腎性低尿酸血症の詳細な頻度」と「低尿酸血症症例において、原因遺伝子変異が臨床情報に及ぼす具体的な影響力」が不明点として明らかになった。そこで、大規模な検診サンプルを用いて多数例の低尿酸血症症例を集め、腎性低尿酸血症の頻度やその病因遺伝子変異との関連解析を行った。
(略)
【研究のまとめ・展望】
本研究を通して、ガイドライン改訂に有用な臨床遺伝学的成果を得ることができた。さらに現在、全国の病院やクリニックを含む医療機関から、腎性低尿酸血症が疑われる症例が集まってくるようになってきており、現時点でも100例以上の症例の遺伝子解析を依頼され、全国の医療機関における臨床診断をサポートしている。これらの症例を対象に、申請者らが提唱している診断モデルを活用し、収集された血清尿酸値と尿中尿酸排泄率から得られる診断と遺伝子解析の結果から得られた診断を照合し診断モデルの正確性の検証を予定している。さらに診断モデルにあてはまらない場合には、腎性低尿酸血症の新規原因遺伝子、変異、病型の探索を進めている。
これらの知見は、将来的なガイドラインの改訂の際に採用される可能性の高い重要な知見であり、腎性低尿酸血症のより正確な診断指針を示せるだけでなく、運動後急性腎障害などの合併症の予防に向けた、迅速かつ積極的な介入にも有用であると期待される。

1. A. Nakayama, Y. Kawamura, Y. Toyoda, S. Shimizu, M. Kawaguchi, Y. Aoki, K. Takeuchi, R. Okada, Y. Kubo, T. Imakiire, S. Iwasawa, H. Nakashima, M. Tsunoda, K. Ito, H. Kumagai, T. Takada, K. Ichida, N. Shinomiya, H. Matsuo. Genetic-epidemiological analysis of hypouricemia from 4,993 Japanese on nonfunctional variants of URAT1/SLC22A12 gene. Rheumatology (Oxford), epub ahead of print (2021).

2. Y. Kawamura, A. Nakayama, S. Shimizu, Y. Toyoda, Y. Nishida, A. Hishida, S. Katsuura-Kamano, K. Shibuya, T. Tamura, M. Kawaguchi, S. Suzuki, S. Iwasawa, H. Nakashima, R. Ibusuki, H. Uemura, M. Hara, K. Takeuchi, T. Takada, M. Tsunoda, K. Arisawa, T. Takezaki, K. Tanaka, K. Ichida, K. Wakai, N. Shinomiya, H. Matsuo. A Proposal for practical diagnosis of renal hypouricemia: evidenced from genetic studies of nonfunctional variants of URAT1/SLC22A12 among 30,685 Japanese Individuals. Biomedicines 9, 1012 (2021).

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