研究成果
2016年度研究助成成果
【鳥居痛風学術賞】
崎山 真幸
防衛医科大学校医学研究科(分子生体制御学専攻)
【研究テーマ】
ゲノムワイド関連解析とfine mappingを用いた痛風の感受性遺伝子ALDH2の同定
【共同研究者】 松尾 洋孝、市田 公美、中村 好宏
【論文】
Sakiyama M, Matsuo H, Akashi A, Shimizu S, Higashino T, Kawaguchi M, Nakayama A, Naito M, Kawai S, Nakashima H, Sakurai Y, Ichida K, Shimizu T, Ooyama H, Shinomiya N. Independent effects of ADH1B and ALDH2 common dysfunctional variants on gout risk. Sci Rep. 2017 May 31;7(1):2500.
アルコール代謝に関係する2つの酵素の遺伝子と痛風との関連をGWAS研究に引き続き、詳細なSNVとの関連を調べた研究である。痛風のリスクとなる遺伝子、および多様性を知る上で重要な研究である。
Higashino T, Matsuo H, Okada Y, Nakashima H, Shimizu S, Sakiyama M, Tadokoro S, Nakayama A, Kawaguchi M, Komatsu M, Hishida A, Nakatochi M, Ooyama H, Imaki J, Shinomiya N. A common variant of MAF/c-MAF, transcriptional factor gene in the
kidney, is associated with gout susceptibility. Hum Cell. 2018 Jan;31(1):10-13.
過去のGWAS研究により痛風とMAF/c-MAFという腎臓の転写因子をコードする遺伝子との関連が示唆されていたが、本論文では詳細に関連性を検討し、確認した研究である。今後、そのメカニズムの研究が進むと思われる。
【田辺三菱賞】
安西 尚彦
千葉大学大学院 医学研究院薬理学 教授
【研究テーマ】
尿酸を輸送基質とする腎尿細管トランスポーター分子同定
【共同研究者】 降幡 知巳、Promsuk Jutabha、大谷 直由、大内 基司、久留 一郎
【論文】
Otani N, Ouchi M, Hayashi K, Jutabha P, Anzai N. Roles of organic anion transporters (OATs) in renal proximal tubules and their localization. Anat Sci Int. 2017 Mar;92(2):200-206.
尿酸の腎臓における排泄と薬剤との関連のメカニズムを研究した論文である。アフリカツメガエルの卵を用いてOAT1 (SLC22A6), OAT3 (SLC22A8)などの発現と無機陽イオンの輸送との関係を調べている。利尿薬投与などで高尿酸血症となるメカニズムなどの研究に非常に役立つ論文である。
Furihata T, Anzai N. Functional Expression of Organic Ion Transporters in Astrocytes and Their Potential as a Drug Target in the Treatment of Central Nervous System Diseases. Biol Pharm Bull. 2017;40(8):1153-1160.
脳の星状細胞における無機イオントランスポータの発現についての研究である。星状細胞は主たる神経伝達物質であるグルタミン酸などの取り込みを行うなどの重要な役割を持っている。この論文ではシナプス裂隙におけるアミン神経伝達物質の除去に関係するトランスポーターを探し、OCT3とモノアミントランスポーターがこれを行うことを報告している。重大な脳疾患は多く、生理的物質だけではなく、薬物もトランスポーターと関係するので役立つ論文である。
【研究助成】
山内 高弘
福井大学医学部病態制御医学講座内科学(1) 教授
【研究テーマ】
新規プリンヌクレオシドアナログForodesineによる耐性白血病の克服
【共同研究者】 細野 奈穂子、大岩 加奈
【論文】
Maruyama D, Tsukasaki K, Uchida T, Maed
a Y, Shibayama H, Nagai H, Kurosawa M, Suehiro Y, Hatake K, Ando K, Yoshida I, Hidaka M, Murayama T, Okitsu Y, Tsukamoto N, Taniwaki M, Suzumiya J, Tamura K, Yamauchi T, Ueda R, Tobinai K. Correction to: Multicenter phase 1/2 study of forodesine in patients with relapsed peripheral T cell lymphoma. Ann Hematol. 2018 Dec;97(12):2529-2530.
Forodesineはpurine nucleoside phosphorylase (PNP)の阻害薬である。PNPは尿酸の代謝に大きく関係する酵素である。抵抗性T細胞リンパ腫の治療薬としての治療結果の論文である。この酵素の欠損症はT細胞減少を示すので、この酵素を阻害すればT細胞が障害されることから適応が考えられた。本論文は重要な治療成績を発表した。
Maruyama D, Tsukasaki K, Uchida T, Maeda Y, Shibayama H, Nagai H, Kurosawa M, Suehiro Y, Hatake K, Ando K, Yoshida I, Hidaka M, Murayama T, Okitsu Y, Tsukamoto N, Taniwaki M, Suzumiya J, Tamura K, Yamauchi T, Ueda R, Tobinai K. Multicenter phase 1/2 study of forodesine in patients with relapsed peripheral T cell lymphoma. Ann Hematol. 2019 Jan;98(1):131-142.
Forodesineはpurine nucleoside phosphorylaseの阻害薬である。抵抗性T細胞リンパ腫の治療薬としての治療結果の論文である。前論文の続編である。追加となる治療成績を発表している。
市田 公美
東京薬科大学薬学部病態生理学教室 教授
【研究テーマ】
慢性腎臓病の進行への尿酸及び関連遺伝子の影響
【共同研究者】 内田 俊也、松尾 洋孝、高田 龍平
【論文】
Nakayama A, Matsuo H, Ohtahara A, Ogino K, Hakoda M, Hamada T, Hosoyamada M, Yamaguchi S, Hisatome I, Ichida K, Shinomiya N. Clinical practice guideline for renal hypouricemia (1st edition). Hum Cell. 2019 Apr;32(2):83-87.
腎性低尿酸血症は腎障害を来すことがあるが、本邦で腎性低尿酸血症のガイドラインが作成された。これはその英訳であり、市田氏も重要な役割を果たした。世界ではこの疾患に関するガイドラインが無いため、極めて有益な活動である。腎性低尿酸血症は腎尿細管のトランスポーターの遺伝的変異により生じる。欠損者は低尿酸だけではなく運動後の急性腎障害を生じる。アロプリノールの投与により腎不全が抑制されるという報告もある。運動後腎不全のメカニズムは不明であり、腎尿細管への尿酸蓄積による尿路閉塞、活性酸素による障害などが考えられているが確実にはわかっていない。
Claverie-Martin F, Trujillo-Suarez J, Gonzalez-Acosta H, Aparicio C, Justa Roldan ML, Stiburkova B, Ichida K, Martín-Gomez MA, Herrero Goñi M, Carrasco
Hidalgo-Barquero M, Iñigo V, Enriquez R, Cordoba-Lanus E, Garcia-Nieto VM; RenalTube Group. URAT1 and GLUT9 mutations in Spanish patients with renal
hypouricemia. Clin Chim Acta. 2018 Jun;481:83-89.
スペイン人の低尿酸血症患者におけるURAT1, GLUT9の変異を報告している。患者はスペイン人であるが市田は遺伝子解析について協力している。このような国際協力は極めて重要であり、日本人との遺伝的変異の違いを明らかにした。尿酸トランスポーターの研究は日本が世界をリードしており、このような研究は重要である。
Nakamura M, Fujita K, Toyoda Y, Takada T, Hasegawa H, Ichida K. Investigation of the transport of xanthine dehydrogenase inhibitors by the urate transporter
ABCG2. Drug Metab Pharmacokinet. 2018 Feb;33(1):77-81.
尿酸トランスポータであるABCG2によるXanthine dehydrogenase阻害薬の輸送に関する研究である。アロプリノールやフェブキソスタットは輸送されないが、アロプリノールの代謝物であるオキシプリノールは輸送される。これらは、尿酸と関連遺伝子の腎臓への影響を調べるために重要である。ABCG2遺伝子には多型が存在するので、個人によりオキシプリノールの代謝が異なる可能性があり、アロプリノールの効果も異なる可能性があると記載されている。
Fujita K, Ichida K. ABCG2 as a therapeutic target candidate for gout. Expert Opin Ther Targets. 2018 Feb;22(2):123-129.
この論文ではABCG2の阻害薬が痛風治療に役立つ可能性について述べている。今後、実際に薬が開発される可能性がある。
久留 一郎
鳥取大学大学院医学系研究科機能再生医科学専攻遺伝子再生医療学講座(再生医療学部門) 教授
【研究テーマ】
高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版改訂の作成
【共同研究者】 荻野 和秀、太田原 顕、浜田 紀宏
【論文】
久留一郎(改訂委員長)他:高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン(2019年改訂、第3版)診断と治療社
これは申請された研究の成果そのものである。
Kuwabara M, Niwa K, Ohtahara A, Hamada T, Miyazaki S, Mizuta E, Ogino K, Hisatome I. Prevalence and complications of hypouricemia in a general population:
A large-scale cross-sectional study in Japan. PLoS One. 2017 Apr 27;12(4):e0176055.
大規模な日本人の集団の調査により、低尿酸血症と腎障害の関係を明らかにした。そのメカニズムについて今後、更に研究する必要がある。
Kuwabara M, Niwa K, Nishihara S, Nishi Y, Takahashi O, Kario K, Yamamoto K, Yamashita T, Hisatome I. Hyperuricemia is an independent competing risk factor
for atrial fibrillation. Int J Cardiol. 2017 Mar 15;231:137-142.
高尿酸血症は心房細動の独立した危険因子である事を明らかにした。血清尿酸値と関連する病態の数は多いが、因果関係について今後、研究する必要がある。この研究のように、多変量解析による解析は重要である。
細山田 真
帝京大学薬学部人体機能形態学研究室 教授
【研究テーマ】
ヒト尿酸トランスポーターURAT1のタンパク発現・精製系の検討
【共同研究者】富岡 直子、押鐘 裕之、岡本 研
【論文】
Hosoyamada M, Tsurumi Y, Hirano H, Tomioka NH, Sekine Y, Morisaki T, Uchida S. Urat1-Uox double knockout mice are experimental animal models of renal hypouricemia and exercise-induced acute kidney injury. Nucleosides Nucleotides Nucleic Acids. 2016 Dec;35(10-12):543-549.
ヒトは尿酸分解酵素、UOXを持たないがマウスは持っている。従って、マウスの血清尿酸値は極めて低い。URAT1は腎尿細管に発現するトランスポーターでこれがヒトで遺伝的に欠損すると低尿酸血症と運動後の腎不全を来す。そこで細山田他はマウスでUOXとURAT1の両方を遺伝的に欠損するマウスを作成した。このマウスはアロプリノールなしでは急性腎不全を来す。アロプリノール投与下では腎不全を来さない。これによりヒトの遺伝病の研究に役立つ成果が得られている。
金子 希代子
帝京大学薬学部臨床分析学研究室 教授
【研究テーマ】
食事中のプリン体値計算プログラムの構築と公開
【共同研究者】山岡 法子、福内 友子
【論文】
Takayanagi F, Fukuuchi T, Yamaoka N, Kaneko K. The observed variation in the purine composition of food after soaking in sake lees. Nucleosides Nucleotides
Nucleic Acids. 2018;37(6):348-352.
この論文では食料を酒粕で処理した後のプリン体の変化を研究し、記載している。日本では食料を酒粕を始め様々な材料で処理する事があり、それがどのようにプリン体に影響を与えるかは、痛風などの疾患や、うまみなどの味覚に影響するかを研究する事は重要である。本論文では様々なプリン体の変化が起きる事を記載している。食事中のプリン体値計算プログラムの構築に役立つ研究である。
Fukuuchi T, Iyama N, Yamaoka N, Kaneko K. Simultaneous quantification by HPLC of purines in umami soup stock and evaluation of their effects on extracellular
and intracellular purine metabolism. Nucleosides Nucleotides Nucleic Acids. 2018;37(5):273-279.
この論文ではうまみスープの中のプリン体の変化を研究し、記載している。様々なプリン体の変化が起きる事を記載している。食事中のプリン体値計算プログラムの構築に役立つ研究である。
http://teikyo.purine-lab.com/purine/
本研究提案の内容である食事中のプリン体値計算プログラムは帝京大学のホームページに既に掲載されている。
藏城 雅文
大阪市立大学大学院医学研究科代謝内分泌病態内科学 講師
【研究テーマ】
腸内細菌環境と尿酸代謝との関連性の検討
【共同研究者】稲葉 雅章、今西 康雄、山田 真介、永田 友貴
【論文】
Yogurt containing Lactobacillus gasseri PA-3 alleviates increases in serum uric acid concentration induced by purine ingestion: a randomized, double-blind, placebo-controlled study
Masafumi Kurajoh, Yuji Moriwaki, Hidenori Koyama, Hiroshi Tsuboi, Hirotaka Matsuda, Naruomi Yamada, Chizuru Saito, Hiroshi Kano, Yukio Asami, Tetsuya Yamamoto
痛風と核酸代謝 第42巻第1号 2018年
藏城他は動物実験で尿酸値を低下させることが証明されているヨーグルトPA-3をヒトに投与し、実際に尿酸値が低下するか否か、また低下すればそのメカニズムは何かを検討した。試験はランダム化、盲検、プラセボ対照のクロスオーバー試験により行った。その結果、血清尿酸値の上昇は有意に抑制された(P = 0.033)。しかし、尿中の尿酸値の低下は見いだせなかった。そのため、血清尿酸値低下のメカニズムは腸からの吸収抑制によると推定している。通常、血清尿酸値低下のメカニズムは産生抑制か排泄促進であるが、腸からの吸収抑制を示した点で有意義な研究結果である。最近、日本からの研究で、腸内排泄が低下するタイプの高尿酸血症の存在が示唆されているが、これらを合わせ考え興味ある研究である。
富岡 直子
帝京大学薬学部人体機能形態学研究室 助教
【研究テーマ】
高尿酸血症を呈するアルツハイマー病モデルマウスを用いた病態解析
【共同研究者】細山田 真
【論文】
Tomioka NH, Tamura Y, Takada T, Shibata S, Suzuki H, Uchida S, Hosoyamada M. Immunohistochemical and in situ hybridization study of urate transporters GLUT9/URATv1, ABCG2, and URAT1 in the murine brain. Fluids Barriers CNS. 2016 Dec 12;13(1):22.
マウス脳におけるGLUT9, ABCG2, URAT1の発現について研究している論文である。脳におけるプリン代謝は近年、大きな注目を浴びている。これらのトランスポーターは腎尿細管において尿酸の輸送に関係し、更に遺伝子の変化が血清尿酸値に影響を与えることがわかっている。これらが脳にも発現し、様々な意義を持っている可能性を明らかにした。今後、ヒトにおける発現のパターンとの相違が焦点である。アルツハイマー病では血清尿酸値が低下することが知られている。更に、キサンチンデヒドロゲナーゼ阻害薬はアルツハイマー病の発症を抑制する事が示唆されている。この論文はアルツハイマー病に関連する研究ではないが、尿酸と脳についての研究であり、研究テーマと合致している。
Morimura N, Yasuda H, Yamaguchi K, Katayama KI, Hatayama M, Tomioka NH, Odagawa M, Kamiya A, Iwayama Y, Maekawa M, Nakamura K, Matsuzaki H, Tsujii M,
Yamada K, Yoshikawa T, Aruga J. Autism-like behaviours and enhanced memory formation and synaptic plasticity in Lrfn2/SALM1-deficient mice. Nat Commun. 2017
Jun 12;8:15800.
Lrfn2/SALM1はシナプスに関係する遺伝子であり、ヒトでは学習障害に関係する。マウスでノックアウトすると自閉症様症状を来すことを示した論文である。
荻野 和秀
鳥取大学医学部附属病院検査部 准教授
【研究テーマ】
酸化ストレスからみた左室拡張機能に対する尿酸降下薬の効果
【共同研究者】衣笠 良治、加藤 雅彦、久留 一郎、山本 一博
【論文】
Kuwabara M, Niwa K, Ohtahara A, Hamada T, Miyazaki S, Mizuta E, Ogino K,Hisatome I. Prevalence and complications of hypouricemia in a general population:
A large-scale cross-sectional study in Japan. PLoS One. 2017 Apr 27;12(4):e0176055.
低尿酸血症と疾患との関連を調べた研究である。聖路加病院と米子山陰労災病院での低尿酸血症の頻度は0.19%と0.58%であった。低尿酸血症の男性は腎不全の既往がコントロールより優位に高かったが他の疾患の頻度は変わらなかったと報告している。低尿酸血症の疾患リスクについて重要な研究である。
程 継東
汕頭大学医学院第一付属病院 教授
【研究テーマ】
高尿酸により単球/マクロファージ細胞へインスリン抵抗誘導に関する検討
【共同研究者】山本 徹也
【論文】
1: Yuan H, Hu Y, Zhu Y, Zhang Y, Luo C, Li Z, Wen T, Zhuang W, Zou J, Hong L,Zhang X, Hisatome I, Yamamoto T, Cheng J. Metformin ameliorates high uric acid-induced insulin resistance in skeletal muscle cells. Mol Cell Endocrinol.
2017 Mar 5;443:138-145.
高尿酸血症はしばしば糖代謝の異常やインスリン抵抗性と関連する。また糖尿病の薬であるメトフォルミンはインスリン抵抗性を改善する。著者他はマウスの横紋筋細胞の細胞株であるC2C12細胞を高尿酸血症の環境にさらし、活性酸素の発生が起きる事を確認した。それによりブドウ糖の取り込みが減少し、これがインスリン抵抗性のメカニズムであると推定している。これに対しメトフォルミンはAMPKを活性化しブドウ糖の取り込みを促進して尿酸によるインスリン抵抗性を改善する事を示した。尿酸と糖尿病の関連のメカニズムについて示唆に富む論文である。
2: Luo C, Lian X, Hong L, Zou J, Li Z, Zhu Y, Huang T, Zhang Y, Hu Y, Yuan H, Wen T, Zhuang W, Cai B, Zhang X, Hisatome I, Yamamoto T, Huang J, Cheng J. High Uric Acid Activates the ROS-AMPK Pathway, Impairs CD68 Expression and Inhibits OxLDL-Induced Foam-Cell Formation in a Human Monocytic Cell Line, THP-1. Cell Physiol Biochem. 2016;40(3-4):538-548.
高尿酸血症はメタボリック症候群と関係するが、これは単球/マクロファージが関係すると著者他は考えている。著者他はヒト単球細胞株THP-1を用いて尿酸が単球/マクロファージに及ぼす影響を調べた。高尿酸液にさらされたTHP-1細胞では活性酸素とAMPKの活性化が起き、CD68の表現障害が起きた。それによりoxLDL誘発性の泡沫細胞形成が起きた。著者他はこれが高尿酸血症がメタボリック症候群と関連するメカニズムを説明するのではないかと考えている。単球/マクロファージの重要性を示唆した論文である。
高田 龍平
東京大学医学部附属病院 薬剤部 講師/第一副部長
【研究テーマ】
尿酸降下薬による尿酸トランスポーター阻害を介した薬物相互作用
【論文】
Miyata H, Takada T, Toyoda Y, Matsuo H, Ichida K, Suzuki H. Identification of Febuxostat as a New Strong ABCG2 Inhibitor: Potential Applications and Risks in
Clinical Situations. Front Pharmacol. 2016 Dec 27;7:518.
尿酸降下薬であるフェブキソスタットが尿酸トランスポーターであるABCG2の強力な阻害作用を持つことを発表している。フェブキソスタットはアロプリノール、トピロキソスタットと同様にキサンチンデヒドロゲナーゼを阻害することにより尿酸を低下させる。しかし、この発表はフェブキソスタットの追加の尿酸降下作用を説明する上で重要な発表である。
Takada T, Yamamoto T, Matsuo H, Tan JK, Ooyama K, Sakiyama M, Miyata H, Yamanashi Y, Toyoda Y, Higashino T, Nakayama A, Nakashima A, Shinomiya N, Ichida
K, Ooyama H, Fujimori S, Suzuki H. Identification of ABCG2 as an Exporter of Uremic Toxin Indoxyl Sulfate in Mice and as a Crucial Factor Influencing CKD
Progression. Sci Rep. 2018 Jul 24;8(1):11147.
ABCG2が尿毒症トキシンであるindoxyl sulfateを排泄する事をマウスで調べた論文である。ABCG2が慢性腎臓病の悪化に関係している機序の一部を説明できる可能性がある。ABCG2は尿酸排泄において重要なATP依存性トランスポーターであり、様々な生理的作用、病理的作用、薬理的作用を持っていることが証明されつつある。
松尾 洋孝
防衛医科大学校分子生体制御学講座 講師
【研究テーマ】
痛風と無症候性高尿酸血症の比較によるゲノムワイド関連解析で炎症の個人差に関わる遺伝子を同定する
【共同研究者】市田 公美、高田 龍平、中村 好宏
【論文】
Higashino T, Takada T, Nakaoka H, Toyoda Y, Stiburkova B, Miyata H, Ikebuchi Y, Nakashima H, Shimizu S, Kawaguchi M, Sakiyama M, Nakayama A, Akashi A,
Tanahashi Y, Kawamura Y, Nakamura T, Wakai K, Okada R, Yamamoto K, Hosomichi K, Hosoya T, Ichida K, Ooyama H, Suzuki H, Inoue I, Merriman TR, Shinomiya N, Matsuo H. Multiple common and rare variants of ABCG2 cause gout. RMD Open. 2017 Aug 29;3(2):e000464.
ABCG2は尿酸値に強く関連する遺伝子であることはわかっている。この遺伝子の稀な多様性とありふれた多様性を調べた結果3のありふれた多様性と19の稀な多様性が発見できた。それぞれは独立に痛風に関係すると結論付けている。稀な多様性の痛風への影響を調べた重要な論文である。
Nakayama A, Nakaoka H, Yamamoto K, Sakiyama M, Shaukat A, Toyoda Y, Okada Y, Kamatani Y, Nakamura T, Takada T, Inoue K, Yasujima T, Yuasa H, Shirahama Y, Nakashima H, Shimizu S, Higashino T, Kawamura Y, Ogata H, Kawaguchi M, Ohkawa Y, Danjoh I, Tokumasu A, Ooyama K, Ito T, Kondo T, Wakai K, Stiburkova B, Pavelka K, Stamp LK, Dalbeth N; Eurogout Consortium, Sakurai Y, Suzuki H, Hosoyamada M, Fujimori S, Yokoo T, Hosoya T, Inoue I, Takahashi A, Kubo M, Ooyama H, Shimizu T,
Ichida K, Shinomiya N, Merriman TR, Matsuo H; Eurogout Consortium. GWAS of clinically defined gout and subtypes identifies multiple susceptibility loci that include urate transporter genes. Ann Rheum Dis. 2017 May;76(5):869-877.
GWASは弱い効果の表現型に関係する遺伝子を探索する方法である。著者らは痛風のリスク遺伝子をGWASにより探索し、新たなリスク遺伝子を含む関連遺伝子を報告している。尿酸だけではなく、痛風に関連する遺伝子を発見する事は貴重である。
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