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理事長通信

第10号 本年度の痛風・尿酸研修会の開催について

公益財団法人痛風・尿酸財団の大きな活動のひとつである「痛風・尿酸研修会」が9月12日に開催されます。コロナ禍の中で、皆さんで集まることができないので、今年はZoomを使ったWeb講演会として開催いたします。今回も100名を超える方々の参加が見込まれています。Web講演会のメリットは数々ありますが、最大の利点は、わざわざ会場まで出向かなくても、ご自宅や職場から参加できるという事でしょう。特に地方の方々にとっては、時間も経費も大幅にカットできますので、大歓迎という声も聞きます。そのほか、自宅や職場から参加できるので、講演内容を他の書籍やネットで調べながら聴講できるというメリットもあります。私の場合、Web講演会を聞きながら、別の画面で講演内容の文献を検索し、論文を読んで確認したりしています。理解がとても深まります。

ただ、心配もあります。コロナ禍で多くの講演会がWeb形式に移行しており、特に若い先生方は、Web講演会の形式も数多く経験されていますので、心配していません。ただ、多くの参加者の中には、この形式に慣れておられない方もおられますし、今回が初めてのWeb講演会参加という方もおられます。今回の研修会では、Web講演会参加に不安のある参加者に対して、事務局がひとりひとり事前にレクチャーをして、接続方法を確認したりしております。大丈夫だと思いますが、理事長としては一抹の不安が残ります。

できる限りの準備はしたつもりですので、皆様の積極的なご参加をお願いいたします。

さて、このコロナ禍。社会は大混乱しておりますが、そのおかげで日本社会の抱える様々な問題点が明らかになってきました。書きたいことはいっぱいあるのですが、ここでは「言葉の発信力」を取り上げたいと思います。今回のコロナ禍は、誰もが経験したことがない災難であり、誰が担当しても試行錯誤になるのは避けられない状況でした。誰も正しい答えを持たない中で、誰からも批判を受けずに政策を進められることは不可能です。その中で、政府や分科会の人々は、よくやっていただいていると思いますし、それなりに評価したいと思います。

しかしながら、政府や分科会の人々の言葉が、多くの人々の耳に届いていないという現実があります。確かにネットからの情報しか信じない人が増えています。ネットは見たい記事しか見ませんので、自分の思いを肯定する情報しか入らない。「人は見たいものしか見ない」。ユリウス・カエサルが言った2000年前の事実は、現在でも事実です。今回のコロナ禍でも、政治家(分科会、医師会も含め)は、危機感を煽るのですが、若者の耳には届かない。そうして、休日の渋谷には若い人があふれ、あるいは外飲みやホームパーティーなどで次々とコロナに感染しています。

なぜ為政者の発言が浸透しないのか。人々が聞く耳を持たないのか。情報源が世代間で異なることは理由のひとつでしょう。しかし、私は、情報を発信する人の、発信力の低さが大きな原因だと思います。要するに発言が、聞く人の心に響いていない。テレビを見ていても、側近が書いた文章を機械的に読んでいるだけの政治家も、パソコン画面に書いた文章を読んでいるだけの専門家も、聴衆に語りかける姿勢がありません。もちろん、重要な発言を間違いなく述べるためには、書いたものを読むほうが正確ですし、実際に失言の多くは、気を利かせたつもりのアドリブから生じていますので、機械的に文章を読むほうが安全です。しかし、演説や報告で、人々の理解を得ようと思うのであれば、自分の言葉で語りかけ、それが聴衆の心に届くことが大切です。人々が聞く耳を持たない大きな理由ではないでしょうか。

「苦い真実は、甘い嘘に勝る。」という言葉があります。ドイツのメルケル首相は、コロナ禍において、心からの怒りをぶつけた大演説をしました。英国のチャーチル首相の演説が、第二次世界大戦の戦局転換に影響したことも良く知られています。米国大統領ばかりか、日本の歴代首相だって、国民の心に届く演説をいっぱいしてきました。残念ながら、現代の日本で、コロナ禍における我々の指針となるような「その通りだ、わかった、今は耐えなければならないんだ」と思わせるような大演説をぶち上げた人は誰もいないように思います。苦しい時ほど「言葉の力」が重要である、という事を、このコロナ禍の中で考えています。

 

2021年9月1日

公益社団法人 痛風・尿酸財団 理事長
医療法人財団順和会山王メディカルセンター院長
山中 寿

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