HOME » 理事長通信 » 2013年 » 第46号 どうすれば薬ができる?

2013年12月10日

第46号 どうすれば薬ができる?

最近、日本発の創薬が滞っている。私はその理由を、人間生物学の統合的理解の不足にあると見ている。

部分、部分は詳細に見るものの、それらを統合する力が弱い。人体の設計図はDNAに描かれている。それを元に病気や薬への反応などの表現型が発現する。DNAの関係する病気として、例えば遺伝病、多因子病、がんがある。これらを統合する理論が遺伝学である。日本の問題点はこれらを別々にしか理解しない事である。DNAとさまざまな疾患の関連を理解しないと複雑な人体で起きる出来事を予測できない。薬物を投与した時、人体で何が起きるかを予測できない。

最近では遺伝病の研究からがんや多因子病の薬ができることもしばしばである。逆の場合も多い。更に、がんゲノムの意義は遺伝病から分かることも多い。

ゲノムが他の分子より重要な理由は、それが結果ではなく原因だからである。原因を動かせば結果は動くが、結果を動かしても原因は動かない。また、結果を動かしても、別の結果が動くとは限らない。蛋白質と疾患が関連があるからと言って、蛋白質を動かして疾患に変化が起きるとは限らないのである。

薬の本質は分子を動かす事により、表現型を良い方向に変えることである。その結果は、疾患のゲノム研究からしかわからない。人間では実験が極めて制限されるからである。

化合物の研究はもちろん必要だが、疾患に関連するゲノムの研究に今より力を入れるべきである。


HOME » 理事長通信 » 2013年 » 第46号 どうすれば薬ができる?

PageTop