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2013年09月09日

第40号 中国の痛風研究事情

中国南充で開かれた第三回東方痛風フォーラム(9月6-8日、会長李長貴青島大学教授)に招待され、出席した。成都から車で3時間かかる不便な場所であるにもかかわらず、参加者は250人を超す、盛大な会であった。この勢いでは中国の痛風研究は規模、内容ともに日本を近々追い越すと考えられる。参加者は中国国内がほとんどで、日本から私、米国からRubin氏、ヨーロッパからドイツのHerrmann氏、台湾から台北の林氏、高雄の陳氏他であった。

その盛り上がりの最大の要因はフェブキソスタットの発売である。中国では30以上の製薬会社がフェブキソスタットの臨床開発を行っており、既に一部は承認を受け発売の予定である。本学会には万邦医薬と言う会社が大きな協賛を行っているようであるが、この会社の「□(にんべんに尤)立通」一般名「非布司他片」が発売間近であるようだ。これがフェブキソスタットの中国名であるようだ。

フェブキソスタットは、もともと帝人ファーマが開発し、米国では武田、アジアではアステラスがライセンスを受けており、中国でもアステラスが承認に向け開発を続けている。しかし、それ以外の会社からの製品が第一に発売されるところが中国らしい。私はフェブキソスタットの中国市場における重要性を古くから訴えていたのであるが、帝人ファーマにライセンスを受けたアステラス以外の会社から先に発売されたのは残念である。しかし、中国の患者さんにとっては朗報であろう。

演題は60題を超すものであり、多くの演題がフェブキソスタットと、アロプリノールによるStevens-Johson/TENに関係するHLA-B*5801をあつかったものであった。また、中国で痛風が増えており大きな問題となっている事、ガイドラインを早急に作るべきである事が議論されていた。更に、驚くべき事にGWASやABCG2、SLC2A9、SLC22A12なども大きな話題になっている。

中国ではアロプリノールによるStevens-Johson/TENとHLA-B*5801の関係は知れ渡っていて、どの先生も多くの副作用患者の症例写真を提示していた。日本でアロプリノールによるStevens-Johson/TENの写真を見る事が少ない事を考えると、中国でいかに発症例が多いかがうかがえた。私の予想では、中国におけるアロプリノールによるStevens-Johson/TEN例は日本の100倍にもなるであろう。そのためフェブキソスタットの発売が待たれていて、そのためにこの学会が盛り上がっていたのである。

中国の先生たちは台湾と協力して痛風の国際誌を作ろうとしている。題名は「Hyperuricemia and Gout」とする予定と言う。同名の雑誌が日本にある(高尿酸血症と痛風)と言うと、「同じ名前じゃまずいかな~」と言っていたが、日本の雑誌は国際誌ではないので、それで行こうということになりそうである。私もAssociate Editorになれと言われたが一年に2個の論文投稿が義務と言われて断った。しかし、1個でいいと言われ、承諾させられた。とにかくものすごい熱気である。Impact factor 5を目指すそうである。このあたりが3を目指す日本人と、最初から5を目指す中国人の違いか。

また、International Society of Goutも作ると言う。大変な意気込みである。私はInternational Symposium of Purine and Pyrimidine Metabolism in Manという歴史ある学会があり、そこで国際的に痛風の発表がなされていたと紹介したが、それは痛風だけでは無いのでかまわないということである。East Asian Society位にしたらと言ったのだが、いやいやInternationalだという。

台湾では日本より痛風が多い事が陳先生他により報告されているが、中国でも栄養状態が良くなればやはり日本より多そうである。しかも、治療が行きとどいてないためか結節など重症例が多そうである。

ガイドラインでは日本のガイドラインが9 mg/dl以上の無症候性高尿酸血症の薬物治療を薦めているが、欧米では薦めていない違いが問題となっている。そのため、日本の痛風患者は軽症が多く、米国の痛風患者は重症が多い。また、日本のフェブキソスタットの初期治療量は10 mg/日であるが、米国では40 mg、ヨーロッパでは80 mgである違いが問題になっている。もともと最初から血清尿酸値を急激に下げる必要は無い。それどころか発作を誘発させる、悪化させる、発作以外の副作用も多いなど問題が多い。初期は10 mgで様子を見、2週間以上たち、尿酸値を見て必要なら20 mg、40 mg、60 mgと増やす方が良いと主張した。米国ではフェブキソスタット治療にともないコルヒチンを投与するのが原則だが、コルヒチンの料金が1日5ドルだそうである。また、痛風発作で入院すれば100万円以上かかるそうである。中国では米国ほど医療費は高くないので、発症前から医療機関できめこまかにコントロールし、無症候性高尿酸血症も程度が強ければ薬物治療も考えて良いのではないか。日本では痛風・核酸代謝学会が年一回開かれており、痛風財団が研修会や研究費支給を行っている事を紹介した。おそらく参考にするものと思われる。Foundationを作るとか言っていた。

いずれにせよ、今後、東アジアの痛風研究の協力体制を早急に形成し、これをアジア、全世界へと広げていくべきである。その中で、日本は中心的役割を果たす事が可能だと思う。痛風に関しては日本は欧米に負けていないどころか、リードしている部分が多い。その知識と技能を世界に示すべきである。


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