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医学の地平線

第8号 一般の痛風や高尿酸血症に影響する遺伝子

血清尿酸値、痛風に与える遺伝の影響は、候補遺伝子アプローチによって始められました。例えば、Lesch-Nyhan 症候群、PRPP 合成酵素亢進症、von Gierke 病、筋Phosphofructokinase 欠損症 などが尿酸産生過剰を通じて高尿酸血症の原因となることは明らかです。これらはメンデル型の遺伝形式を示します。

これらのメンデル型遺伝病は非常に頻度が低いものです。しかし、一般の痛風は非常に頻度が高く、これらのメンデル型の痛風や高尿酸血症とは異なります。一般の痛風に関連する遺伝子を発見することは研究者の夢でした。

最近になって、疾患、あるいは検査値の遺伝的原因の検索法は一変しました。ゲノムワイドアプローチによる尿酸関連遺伝子の発見が相次いでいます。まず、連鎖解析によりウロモデュリン変異による高尿酸血症が発見されました。更に、2002 年に理化学研究所から初めて発表されたゲノムワイド関連解析(GWAS;genome-wide association study)という手法は強力であり、メンデル型以外の形質に関連する遺伝子も発見できます。GWAS によりSLC2A9 (GLUT9) 、ABCG2、SLC17A3などの遺伝子が痛風、あるいは高尿酸血症と関連する遺伝子として発見されました。SLC2A9 は候補遺伝子アプローチからも発見されています。

最近、また28,000 人という膨大な数の人数を使って、GWAS により尿酸値と関連する遺伝子の検索結果が発表されました(1)。SLC2A9 (GLUT9), ABCG2, SLC17A1, SLC22A11, SLC22A12 (URAT1 coding),SLC16A9, GCKR, LRRC16A、PDZK1 の近傍、の9 つです。GCKR (glucokinase regulatory protein) は、別の研究で中性脂肪に関連することが報告されています。また、PDZK1 にコードされる蛋白質は生化学的研究により、URAT1 に関連して尿酸の輸送を制御することが示唆され得ている分子です。

以上の事実は、候補遺伝子アプローチにより発見された関連遺伝子は、GWAS で発見された遺伝子の中にもやはり入っているという事実です。さらに、環境因子の多くが尿酸産生に関係するのに比較し、遺伝的因子の多くが尿酸の腎臓からの排泄に関係しています。即ち、特殊な遺伝病などをのぞき、血清尿酸値は遺伝に関する尿酸排泄に関連する因子と、環境に関連する尿酸産生に関する因子により制御されているようです。

Kolz M et al. Meta-analysis of 28,141 individuals identifies common variants within five new loci that influence uric acid concentrations. PLoS Genet 5, Epub 2009.

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