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2009年01月07日

第3号 重要な論文

最近、次のような重要な論文が国立医薬品食品衛生研究所(厚生労働省関連の研究所)から発表されました。

Kaniwa N et al. HLA-B locus in Japanese patients with anti-epileptics and allopurinol-related Stevens-Johnson syndrome and toxic epidermal necrolysis. Pharmacogenomics 9, 1617-1622, 2008

アロプリノールは痛風治療において重要な薬物で、現在のところ尿酸産生抑制薬としては唯一の薬剤です。比較的安全な薬で、重症の副作用は稀です。しかし、極めて稀ですが、重症の皮膚障害を含む副作用が起きます。 例えば、スティーブンス-ジョンソン症候群などと呼ばれる副作用で死亡の危険もあります。

アロプリノールにより稀に起きる重症副作用について、最近極めて重要な上のような研究結果が発表されています。

同様の研究は、最初は台湾から、引き続きアジア諸国から発表されたもので、HLA-B*5801という遺伝子を持っているとアロプリノールによる重症副作用を起こしやすいというものです。

台湾からの報告では、アロプリノールにより重症の皮膚副作用が起きた患者の全員がHLA-B*5801の遺伝子を持っていたというものでした。

その後の報告では、ヨーロッパ人の場合はアロプリノールによる重症の皮膚副作用の55%がこの遺伝子を持っていました。

日本からの報告がようやく最近でました。日本ではアロプリノールを服用していて重症の皮膚副作用を起こした10人中4人(40%)がHLA-B*5801を持っていました。一般日本人ではこの割合は1.2%なので、この遺伝子がアロプリノールの重症副作用に関連していることは間違いありません。

このように、薬による副作用は人種によりかなり違うのです。その理由の一部は、このように遺伝子の違いによるもののようです。中国人はHLA-B*5801の遺伝子を持っている人が多く(20%)日本人は少ないので(1.2%)、アロプリノールによる重症の皮膚副作用に占めるHLA-B*5801の割合に違いがあるようです。ヨーロッパ人はその中間のようです(1.6%)。

中国人ではアロプリノールを服用する前に遺伝子を検査することは有効でしょうが、日本人では遺伝子の頻度が低いので、医療経済的に考えて合わない可能性があります。

今後、どのような場合に臨床に遺伝子検査を採用するか、議論が必要だと思います。 更に、薬と遺伝子の関連の重要性が益々問題になってくるでしょう。


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