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2008年10月12日

第1号 第19回痛風研修会の報告

平成20年9月21日、東京、慈恵会医科大学1号館で「第19回、痛風研修会」が開かれました。有意義な発表が色々ありました、新しい知見も多く、医師の日々の診療に役立つ内容、患者さんに役立つ内容もありましたので、一つずつ報告したいと思います。

1. 腎臓で尿酸を輸送するたんぱく質が次々に発見されている。
東京薬科大学薬学部、市田公美先生

尿酸の多くは肝臓で出来て、腎臓から排泄されます。この排泄のためには血液から尿に尿酸を運んだり(排泄)、戻したり(再吸収)する必要があります。昔は、間接的にしかわからなかったのですが、最近は遺伝子の研究により直接の証拠が一杯あがっています。
遺伝子は全部で2万から3万あるのですが、この中でSLCなんとかという遺伝子が一杯あるようで、これが物質を輸送する役割を果たしています。このうち、少なくとも3つは確実に尿酸を運ぶ役割を果たしているようです。SLC22A12という遺伝子はURAT1というたんぱく質の遺伝子で、これが尿から尿細管へ尿酸を輸送するようです。また、SLC2A9という遺伝子はGLUT9というたんぱく質の遺伝子で、これは尿細管から髄質側に尿酸を輸送するようです。

これらの遺伝子がなぜ見つかったかというと、人間の約32億個のゲノム配列(A, T, C, Gの文字の並び方)がすべて解明されたからです。このように遺伝子研究の進歩により今まで全くわからなかった腎臓での尿酸の動きがわかってきました。これらのたんぱく質はベンズブロマロン(ユリノーム)、プロベネシド(ベネシッド)などの薬の働きと大きく関係しています。この二つの薬は、URAT1を抑えることにより効果を発揮することがわかりました。また、結核の薬ピラジナミドは尿酸値を上昇させることがわかっていますが、これはURAT1を介して薬と尿酸が尿細管の細胞表面で交換するためのようです。
更に詳細な研究が進むことが望まれます。

次には、痛風発作機序についての、赤星透先生のお話を報告します。痛風発作のメカニズムについても最近大きく変化しているようです。

2. 痛風発作機序研究の進歩
北里大学医学部総合診療医学教授、赤星透先生

赤星先生は以前から痛風発作の分子的メカニズムを積極的に研究されています。この分野でも最近大きな進歩があったようです。最近、自然免疫とかToll様受容体という名前を良く聞くのですが、自然免疫に関係するToll様受容体や、inflammasome, TREM-1などの自然免疫に関係する受容体が痛風発作に大きな役割を果たしているようです。

尿酸塩結晶が異物として内因性の危険信号をなり、急性炎症を起こすようです。

ランチョンセミナー
メタボリックシンドロームと高尿酸血症~心血管疾患予防に向けて~
大阪大学大学院医学系研究科内分泌・代謝内科学准教授 船橋徹先生

最近、話題をさらっている「メタボリックシンドローム」についてわかりやすい解説をしていただきました。また高尿酸血症とのかかわりも解説していただきました。
脂肪細胞が合成するアディポサイトカインなどとのかかわりもからめ、肥満予防が心血管障害の予防にもつながることを強調されました。睡眠時無呼吸症候群とも関係するようです。また、各国のメタボリックシンドロームの基準の違いについても解説しました。

痛風発作の臨床的考察
~血清尿酸値が低いのに、なぜ痛風発作が起きるのか?
みどりヶ丘病院副院長 清水徹先生

清水先生は長年、尿酸結晶の生成の条件について研究を続けておられます。今回は、血清尿酸値が低い場合に痛風発作がしばしば起きる理由について、図を交えてわかりやすく説明していただきました。血清尿酸値が高い時だけ痛風発作が起きるのではありません。

関節液中の尿酸濃度は血清尿酸値と等しいそうです。尿酸ナトリウムの飽和溶解度は約7mg/dlであり、これ以上になると関節液中で尿酸塩結晶が生成される可能性があります。しかし、痛風発作は尿酸塩結晶が生成されたときではなく、むしろ結晶が脱落してはがれ落ちがときに起きやすい(crystal shedding)のです。従って、むしろ尿酸低下薬などで血清尿酸値が急激に低下したときに発作が起きやすいと清水先生は言います。

清水先生は、「雪の絵」を用いたイラストにより、この事情を患者さんに視覚的に説明しているそうです。これは実地診療上大変有用とのことです。ただし、痛風発作の後で血清尿酸値を測った場合、正常値であることも多いのは、発作時にサイトカインなどの作用により尿酸が腎臓から排出されるということによる部分が大きいようです。

二次性高尿酸血症の診断と治療
福井大学医学部内科学(1)講師
山内高弘先生

一次性高尿酸血症は全高尿酸血症の95%を占めます。しかし約5%は基礎疾患や薬の影響によるもので、これを二次性高尿酸血症といいます。これらは一次性の場合と違った対策が必要なので、良く注意し見逃さないようにする必要があります。

また、二次性高尿酸血症は尿酸産生過剰型、尿酸排泄低下型と混合型にわけられますが、悪性腫瘍、溶血性貧血、高プリン食摂取で尿酸産生過剰型、腎障害、利尿薬、降圧利尿薬、結核の薬(エタンブトール、ピラジナミド)で尿酸排泄低下型の高尿酸血症が起きます。

注目すべき病態として、悪性腫瘍の治療後に腫瘍細胞が崩壊しておきる「急性腫瘍溶解症候群」があります。これは細胞が一斉に壊れるために核酸が多量に壊され、その結果尿酸が大量に生産されるものです。尿酸が腎臓の尿細管で結晶になり、急に腎臓の働きが低下し、腎不全になります。その治療法として最近ウリカーゼ(ラスブリケース)が注目されます。これは尿酸を分解する酵素「尿酸酸化酵素」です。

食事とプリン体 – 食事による生活改善
帝京大学薬学部薬品分析学教室教授
金子希代子先生

金子先生は長年、食品中のプリン体の分析をしている先生です。それまで信頼できるプリン体含有のデータが無かったのですが、金子先生の努力により正確なデータが次々に出ています。
以前は、食事中のプリン体はあまり重要ではないと考えられた時期もあったのですが、最近やはり重要だと考えられるようになっています。それは米国で食事と痛風の関係を長年分析した結果が発表され、やはりビール、肉、海産物などプリン体の多い飲料や食品が痛風を起こしやすいことがわかったからです。

金子先生は食事が血清尿酸値に影響を与える理由に二つあるといいます。一つは食品中のプリン体が尿酸となること、第二は食品中のたんぱく質などが腎臓からの尿酸の排泄に影響を与えることです。金子先生はおいしいものや細胞数の多い食品にプリン体が多く含まれているといいます。食品に含まれるプリン体の量は、きわめて多い、多い、中程度、少ない、極めて少ないの5種類に分類される。食事療法では極めて多いと、多いの二つに注意する必要があるということです。
財団法人、痛風研究会のこのホームページに金子先生による食品中のプリン体含有量が出ていますので見て置いてください。

高尿酸血症のマネージメント
東京女子医科大学膠原病リウマチ痛風センター教授
谷口敦夫先生

谷口先生は最近教授になった、新進の先生です。この講演では特に痛風の薬物療法について詳しく解説していただきました。
高尿酸血症の治療薬としては、プロベネシド、ベンズブロマロン、ブコローム、アロプリノールが用いられている。これらの薬効は確実であり、また副作用に付いても良く知られている。しかし、次のような点に付いて注意する必要があるとのことです。

  1. いつから尿酸降下薬を開始するか
  2. どの尿酸降下薬を選択するか
  3. 血清尿酸値のコントロール目標はどの値に設定するか
  4. いつまで尿酸降下薬を続けるか
  5. 副作用のチェック

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