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痛風・尿酸ニュース

痛風・尿酸研究を支える牛乳

関根 舞(日本獣医生命科学大学 生体分子化学)

獣医学科出身の私は、動物由来の試料や培養細胞を用いて代謝研究を行なっています。博士課程でプリン代謝研究を開始し、西野武士先生のご指導のもと、尿酸生成酵素であるキサンチン酸化還元酵素(XOR)の研究に取り組み、酵素学の基礎から創薬研究まで幅広く学びました。また、これまで痛風・尿酸財団の研究助成に継続して支えていただき、研究を継続・発展させることができました。

私たちの研究では、牛から搾ったままの生乳を使用します。XORは牛乳中に豊富に含まれますが、市販牛乳では加熱殺菌や均質化処理が施されているため、研究に必要な高品質な酵素を得るには新鮮な生乳が欠かせません。日本獣医生命科学大学には、山梨県富士河口湖町・富士ヶ嶺に富士アニマルファームという附属牧場があります。学部生のときは泊まり込みで大動物の臨床実習に励んだ場所ですが、今では私たちのプリン代謝研究を支える大切な拠点となっています。

牛乳は季節によって乳量や乳成分が変化しますが、XORは乳脂肪球膜(Milk Fat Globule Membrane, MFGM)の主要な構成タンパク質の一つであるため、乳脂肪分が比較的高くなる秋から春先に生乳を搾乳しています。早朝4時頃の搾乳に合わせて牧場へ向かいますが、富士の麓はまだ真っ暗で、街灯のない樹海沿いの道を車で走るたびに毎回緊張します。道中では鹿に遭遇することも珍しくありません。乳質成績をもとに選んだ乳牛から搾乳し、まだ温かい生乳約10~20Lをクーラーボックスで冷却しながら大学まで運びます。到着後はすぐに遠心分離を始め、丸1日かけてクリーム分画を回収します。しばらく実験室には牛乳の香りが漂います。MFGMを含むバターミルクを回収する過程では、バターもできます。真っ白な牛乳から精製を進めていくと、液体は乳酸菌飲料のような乳白色へと変化し、さらに工程を重ねると、最後には透明感のある茶色い酵素液になります。こうして得た高純度・高活性のXORを用いて、XOR阻害薬であるアロプリノールと、その活性代謝物オキシプリノールの詳細なXOR阻害機構を解明しました。この研究により、ヒポキサンチンからキサンチンへの反応を効率よく阻害することが、高い尿酸生成抑制作用につながることが明らかとなりました。この知見をきっかけに、ヒポキサンチンの生理的役割に着目するようになりました。ヒト脳組織やヒトiPS細胞由来神経細胞を解析したところ、脳ではXORはほとんど発現せず、尿酸もごくわずかしか存在しない一方で、ヒポキサンチンを再利用するプリンサルベージ経路の酵素が高発現・高活性であり、本経路が極めて重要であることを明らかにしました。さらに、XOR阻害薬によって維持されたヒポキサンチンがATP産生を支え、神経細胞を保護する可能性を示しました。このように、牛乳由来XORを用いた基礎研究は、痛風治療薬の作用機序の解明から脳のエネルギー代謝の理解へと発展し、新たな神経変性疾患治療戦略につながる成果となりました。

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