痛風・尿酸ニュース
プリン代謝から読み解くミクログリア変容の新機軸
鶴田 文憲(筑波大学 生命環境系)

私たちのグループは、中枢神経系のグリア細胞と脳境界インターフェイス(髄膜や血管など)の関係に着目し、日々の研究に取り組んでいます。プリン代謝の研究は、当時学生であった岡島(高橋)智美さん(現・第一三共の研究員)が、培地の違いによってミクログリア細胞株の形態が変化することに気がついたことから始まりました。岡島さんは、培地組成を一つずつ丁寧に調べ、ヒポキサンチンが鍵因子であることを突き止めました(Okajima T, eNeuro. 2020)。ヒポキサンチンはプリン代謝の中間代謝産物で、細胞の生存に必須であるATPやGTP産生の起点となる重要な物質です。続いて、岡島さんと共同で研究を進めていた学生の照屋林一郎さん(現・当研究室 博士研究員)は、アロプリノールやミコフェノール酸モフェチルなど、プリン代謝関連酵素の阻害剤をマウスに投与したところ、脳内ミクログリアの形態が変化することを発見しました(Teruya RI et al. MicroPubl Biol. 2025, Teruya RI et al. Mol Brain. 2026)。現在、ヒポキサンチンからイノシン酸への反応を触媒する酵素HGPRTのノックアウトマウス(Hprt KOマウス)を作製し、生理機能と病態変化について解析をすすめています。これまでのHprt KOマウスの解析では、脳内GMP濃度の減少や赤血球数の低下に加え、ミクログリア突起の運動性低下や突起と血管の接触パターンの変化などが観察されています。現在、これら現象がもつ生理的意義について精力的に解析を進めているところです(Teruya et al. in preparation)。
私がプリン代謝、とりわけHGPRTに強く興味を持った理由の一つとして、Hprt遺伝子が、希少疾患レッシュナイハン症候群(LNS)の責任遺伝子であることが挙げられます。LNSは、Hprt遺伝子に変異が入ることで、尿酸の蓄積が誘導され、痛風や高尿酸血症を発症します。しかし、LNS患者は、自傷行為や精神遅滞など、一見、プリン代謝とは関係がなさそうな脳機能障害もみられ、その根本的原因はいまだ解明されておりません。私たちは、Hprt KOマウス解析で得られたミクログリア-脳血管連関の知見から、LNSの脳機能障害の鍵はミクログリアにあると考え、分子生物学や生体イメージングの手法を駆使して検証を進めています。自他共にエキサイティングな研究を展開しながら、疾患の病態解明や創薬シードの開発に貢献できれば、この上ない喜びです。近い将来、革新的な研究成果を発表できるよう、日々の研究に邁進していく所存です。最後に、本研究をご支援くださっている貴財団の皆様に心より感謝申し上げます。
HOME » 痛風と尿酸について知りたい方へ » 痛風・尿酸ニュース » プリン代謝から読み解くミクログリア変容の新機軸

