痛風・尿酸ニュース
新型コロナ感染症雑感
森崎 隆幸(東京大学医科学研究所 特任教授)
新型コロナ感染症(COVID-19)は、2019年12月の最初の報告、翌月の日本での初症例以来、これまでの2年以上にわたり波状の感染を繰り返しています。現在なお、健康と病気についての最大のトピックスであり、新規技術を駆使しての早期ワクチン開発と接種普及が進められましたが、まだ決定的な治療薬の開発と実用化には至っていません。当初から、重症化につながる危険因子についての評価が行われ、その中で、高尿酸血症・痛風についての検討も行われました。国内の検討では、高齢、慢性腎臓病に加えて、高尿酸血症・痛風がCOVID-19死亡の危険因子であることが報告されましたが、中国では、患者は入院時に血清尿酸値は低値であり、低値患者は悪化リスクが高いとも報告されました。その後、多くの報告により、高尿酸血症・痛風はCOVID-19の悪化や死亡の危険因子であるとされ、英国での大規模コホートでの患者1.7万人の検討では、死亡は1.3倍の増加があるが、痛風・高尿酸血症の治療による死亡リスクの変化は認めなかったと報告されています。ウイルス変異種による違いもありますが、高尿酸血症・痛風も心血管病、糖尿病、肥満などと同様にCOVID-19感染症の重症化リスクとなると考えて対応することが必要と考えられます。
さて、COVID-19など新規ウイルス感染症への対策は、他の新規感染症と同様に、病因病原体の同定に始まり、既存の治療薬による効果の確認、予防策としてのワクチン開発を進めながら、治療薬の開発を行うことになりますが、同時に市中の感染状況の把握と先に述べたような感染者についての疫学調査が大変に重要です。日本では、コロナ感染症の拡大前まで、感染症研究はどちらかというと日陰の研究領域であった感もあります。しかし、地道な研究の継続と最新の技術・情報を駆使しての病因解明・予防法・治療法の開発が重要であることが認識されていると思います。100年以上前のスペインかぜ流行時では、まだウイルス同定されていない中、その対策は「マスク」であって現在と違いのないことに驚かされますが、(実は効果がないのですが)予防注射も推奨されましたが、感染状況については内務省にて詳細に記録されており、文庫本で見ることもできます。
むろん、現在のCOVID-19ワクチンは明らかになった病原体への効果の検証の上で実用化されており、その開発に最新の技術が駆使されている点で100年前とは大きな違いがありますが、地道な研究が継続されていればこそ、であることを忘れることはできません。たまたま、小生は留学中にmRNAワクチン開発の原動力となったRNA修飾の開発者であるKatalin Kariko博士と隣で研究する機会があり、当時、RNA研究は興味深いとは思っていましたが、彼女は十分に評価されない中、信ずる研究を進める姿が印象的でした。
ワクチンや効果的な治療薬のさらなる開発が進み、高尿酸血症・痛風患者を含めて安心して過ごせるよう、多くの領域での不断の研究継続が重要であると痛感するこの頃です。
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