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第128号 痛風財団名称変更について

公益財団法人痛風財団は令和元年5月31日の評議員会で、「公益財団法人痛風・尿酸財団」と名称を変更することを決めました。正式な名称の変更は7月1日からです。今回は、変更の理由を中心に説明したいと思います。

数年前から痛風や尿酸に関係する医師や研究者から、日本痛風・核酸学会や公益財団法人痛風財団の名称の中に「尿酸」の文字を入れてほしいとの要望が多数寄せられていました。その理由の一つは、尿酸が高くても痛風には至らない人は非常に多いからです。このような高尿酸血症の人たちは、予防により痛風にならずに済むかもしれません。従って、当財団としては医療従事者や一般の方に高尿酸血症の対策について幅広く知らせる必要があります。本来、痛風財団は痛風だけではなく高尿酸血症の人々も対象としては居るのですが、一般にはそれが明確には伝わっていない可能性があります。これが一つの理由です。

更に、「痛風」以外の医学や健康の様々な分野からも財団の名称に「尿酸」の文字を入れてほしいという要望が寄せられていました。例えば心臓を始めとした循環器疾患、腎臓疾患、神経疾患、血液疾患、内分泌疾患などの医師や研究者です。これらの疾患ではしばしば尿酸値が変化します。高くなるだけではなく低くなることもあります。その典型は、腎臓の尿細管の輸送蛋白質の遺伝的変化による腎性低尿酸血症です。これらの人々は運動時に腎不全を来すことがあります。更に、運動医学の医師や研究者からも同様の要望が寄せられていました。運動後には血液中の尿酸が高くなるからです。これが第二の理由です。

実は、尿酸が循環器疾患、腎臓疾患、神経疾患に影響するという研究結果は多く発表されています。それにも関わらず、尿酸とそれらの疾患の因果関係には結論が出ていません。尿酸が原因でこれらの病気が起きるのか、または尿酸は原因ではなくこれらの病気の結果なのか、あるいは何か別の要因が尿酸に変化を与え同時に病気の原因にもなっているのかという問題です。これは尿酸をコントロールすべきかどうかという事にもかかわる重大な問題です。例えば、尿酸が病気の原因であるならば、尿酸をコントロールすることで病気もコントロールできるでしょう。

かつては介入研究をすれば原因かどうかがわかると言われていました。しかし、最近、それもあやしくなりました。例えば尿酸を下げる尿酸産生阻害薬には尿酸を下げる以外の効果もあることがわかってきたからです。例えば、活性酸素を抑制する、炎症を抑える、ATPを増加させるなどの効果です。従って、尿酸産生阻害薬投与で循環器疾患が改善しても、それが尿酸を下げたための作用によるのか、それ以外の作用によるのかがわかりません。

しかも、最近、尿酸産生阻害剤の投与により様々な疾患に効果があるという論文が相次いでいます。例えば、循環器疾患、腎臓疾患、筋肉疾患、認知症などです。これらの作用が尿酸を下げることによるのか、あるいは上述の別の作用によるのかは大問題です。更に、心臓疾患については、尿酸産生阻害薬服用中は良いが、中止した後に悪化するという論文も出るようになり、大きな問題となっています。なぞは深まるばかりです。

これらの大問題は「痛風」という範疇に含めることは不可能です。痛風の専門家だけでは解決の付かない問題です。しかし、研究の進展によっては様々な分野に大きく貢献する可能性も高いと言えます。

以上のような理由で、7月1日から「公益財団法人痛風財団」は「公益財団法人痛風・尿酸財団」と名前を変更します。これにより多くの医師、医学研究者更には医療従事者、患者さんや一般の方々も参加できる財団になると考えています。

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