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2015年01月20日

第91号 先端科学は大衆化する

現在、多くの人々が使っている様々なツールは、以前先端科学と言われていたものです。先端研究者が独占的に使っていたものなのです。それを、一般の人々が使うようになるとは想像もできませんでした。

約45年前、私は大型コンピュータを大学で使っていましたが、これを一般の人が使うようになるとは到底思いませんでした。この頃、既にアラン・ケイは個人使用のコンピュータ、ダイナブックを想定していたようで感服する他ありません。

35年ほど前、私は日米のコンピュータ間で通信する研究に従事していましたが、これを一般の人が使うようになるとは思いませんでした。

約30年前、私はマルコフ過程について興味を持ち勉強していましたが、これを応用したアルゴリズムに基づいて、世界の多くの人がデータの検索を行うことになるとは思い付きませんでした。

私が誤った理由は、一般の人にそんな難しい理論がわかるはずがないと思ったことです。しかし、その必要はないのです。コンピュータ理論がわからなくてもパソコンは使えるし、マルコフ過程の不変分布がわからなくてもグーグル検索は出来るのです。

以上の私の経験から、反省の意も込めて、未来の一般の人々の行動を予測したいと思います。人々は自分の全ゲノムデータと、使用可能な膨大な他人のゲノムデータを用いて、連鎖解析やゲノムワイド関連解析をやるようになるでしょう。更に、主成分分析を用いて自分の遺伝的所属集団を確認するでしょう。もっと進んで、自分の多数の体細胞ゲノムデータを用いて体細胞連鎖解析や体細胞ゲノムワイド関連解析を行って、がん予防、早期発見、治療薬選択、治療後モニタリングを行っているかも知れません。

そんな難しい事を大衆がやるわけない、と思うのもっともなご意見です。しかし、それではグーグル検索を行っている一般の人たちがマルコフ過程や不変分布を理解しているでしょうか。一般の人々は理論を理解する必要はなく、その利便性がわかれば十分なのです。


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