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2014年08月22日

第78号 中国痛風事情

中国は色々な問題を抱えながらも、世界の中で存在感を増していることは間違いないと思います。鄧小平氏の指導のもと改革開放路線を始めた時、中国がこのような発展を遂げる事を誰が予想したでしょうか。私自身も、中国は貧しい国であり続けるであろうと誤解していました。

私は20年ほど前、北京に学会で行きましたが、この時は北京の道は自転車で溢れかえっていました。自転車の洪水の中を走るバスの姿を今でも思い出します。最近は多くの自動車が走り回る街になっています。東京をはるかに超える数の高層ビルが立ち並ぶ姿は、以前からは想像もできないほどです。

中国の存在感は科学や医学の分野でも急速に増してきています。20年ほど前、アメリカの研究室は日本人研究者であふれていました。日本人研究者は真面目でよく働き、5時過ぎや週末に研究室に居るのは日本人と相場が決まっていたものです。科学論文の筆頭著者も日本人が非常に多く、誇らしい気持ちになったものです。

しかし、今では状況が大きく変わったようです。科学論文の筆頭著者も中国人と思われる名前が目立つようになっています。日本人が海外の大学や研究所に留学する数も減っているのではないでしょうか。日本が外から学ぶことはもうあまり無いと誤解している人が居るとしたら、未来が本当に心配です。

痛風研究の分野でも大きな変化が起きつつあります。痛風の分野では幸い、日本の存在感は非常に大きいと言えます。痛風と高尿酸血症治療のガイドラインも世界ではじめて発表され、遺伝子の研究も世界をリードしています。痛風治療薬の分野でも日本初の薬が世界で発展を遂げています。しかし、この分野でも中国の存在感が大きくなりつつあります。

中国は世界に先駆け、痛風と高尿酸血症を専門とする国際誌を発刊しました。「Gout and Hyperuricemia」という雑誌でOnline医学雑誌です。

http://www.gouthyperuricemia.org/main.php

編集長は青島大学の李教授で私も副編集長を務めています。中国は、これを世界の痛風研究をリードする雑誌にすると意気込んでいます。私は初回に痛風と高尿酸血症治療の総説を書きました。原著論文をみても、遺伝子の研究なども多く、相当な高度な内容です。中国で編集に加わるメンバーと話したのですが、Natureなどに論文を発表しているような研究者が編集に携わっています。

痛風に関する学会も中国でこれまで3回開かれました。東方痛風フォーラムという集会で、最初から中国、朝鮮半島、日本、台湾を対象としています。参加者の数も多く、日本の痛風・核酸代謝学会を凌駕しています。痛風に関する学会が存在するのは日本と中国だけだと思います。第4回は北京で8月30、31日に開催されます。

日本では中国を軽視するような報道もありますが、私は決して見くびってはならないと思います。歴史を見れば中国が日本より下に見えたのはほんの僅かな時だったことがわかります。文明も、日本はほとんど中国から学んだはずです。世界の大国として再び台頭しつつ有る中国と、我々がどのように付き合っていくか、これからが日本の正念場だと思います。

国を衰退させる最大の原因は傲慢(arrogance)だそうです。バブル崩壊の前、日本は多少、傲慢になったのではないでしょうか。あの時、未来を考え、自国が危機にあることを多くの人が自覚していれば、今よりもっと良い社会になったと思います。自分が最高と思った時が、最も危ない時である事を肝に銘じるべきだと思います。


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