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2014年03月11日

第57号 相関と回帰に見る因果

二つの変数の関係を表わす統計的概念として、相関と回帰があります。いずれも生物計測学派のゴールトンにより提唱され、ピアソンにより整備された概念です。

これらの概念はいずれも複数の対称物の関係を表わす概念ですが大きな違いがあります。相関はxとyを入れ換えても変わりませんが、回帰はxとyを入れ換えると変わります。前者はxとyに関し対称ですが、後者は非対称です。

回帰では等式の右側にある変数を説明変数、左側にある変数を従属変数と言います。右が原因で左が結果です。回帰は因果を念頭に置いた概念です。

ゴールトンによる回帰の最初の応用は親子の身長に対してのものでした。親の身長が子の身長に影響を及ぼすことを念頭に置いたものです。子の身長の親の身長の上への回帰を考えることは意味がありますが、逆の場合は意味をなしません。子の身長が親の身長に影響を及ぼすことはあり得ないからです。

回帰(regression)の用語はゴールトンの命名です。親の身長よりも、子の身長は平均に戻る(回帰)傾向があるとゴールトンは解析結果を見て解釈しました。これが「回帰」という命名の理由です。ゴールトンはこれを遺伝の本質によると考えました。しかし、メンデルの法則が正しければ、ゴールトンの仮定は誤りです。

これは回帰の非対称的性質により説明できます。通常の二変数正規分布の場合でも従属変数は説明変数に対し、傾きが0に近づく傾向があります。

因果を念頭に置いた統計的概念が親子の遺伝的研究から始まったのは象徴的です。実は遺伝以外の問題ではどれを説明変数に、どれを従属変数に選ぶか迷うことも多いものです。いつでも因果が容易に区別できるとは限らないからです。


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