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2012年06月12日

第23号 諸外国における痛風事情と新薬

ここ10年で世界の痛風事情は大きく変化しつつあります。日本では以前から痛風の話題は大きく、研究も盛んでした。しかし、日本以外の国では痛風はそれほど関心を呼ばない期間が長く続きました。

この変化は、GoogleのNGramという、書籍で用いられる言葉の頻度を調べるプログラムでも、PubMedでの検索でも1990年代には極めて低調だった痛風(gout)に関する記述が、2000年代にかなり増えていることがわかります。ここ数年の増え方はめざましいものです。

その大きな理由の一つが痛風の新薬の開発にあることは間違いないでしょう。特に、帝人ファーマから発売されたfebuxostat(日本での商品名はフェブリク)が世界の多くの国で承認されたことが大きいと思います。この薬は、キサンチン酸化酵素を阻害する薬です。その他にもPEG-ウリカーゼも世界のいくつかの国で承認されています。それに従い痛風の研究や話題が盛んになっているのです。

その結果、わかってきたことは欧米の痛風の重症度です。欧米では痛風があまり注目されてこなかったためforgotten diseaseと言われました。そのため多くの医師が痛風治療に慣れておらず、痛風結節を伴うような重症の痛風が増えてしまったのです。幸い、日本では痛風研究や教育がずっと盛んだったので、痛風の患者さんは比較的軽症の例が多いのです。

日本の痛風と米国の痛風の違いがはっきりとわかったのも、新薬開発に伴う治験のデータからです。治験では、治療を行う患者さんのデータを整理し、統計解析を行います。その結果、違いがはっきりとわかるのです。

欧米ではそれに気づいて、以前より痛風を重要な病気と考えるようになってきました。治療のガイドラインも日本が最初ですがヨーロッパや米国でも作られるようになっています。痛風患者さんにとっては非常に好ましい事です。

Febuxostatは、その前に発売された痛風治療薬、アロプリノールから40年ぶりに発売された世界の新薬です。そのため治験の結果が世界最高の臨床の雑誌、N Engl J Medに掲載されました。

また、アロプリノールと違って、腎臓からの排泄だけに頼るのではなく、肝臓での異化作用を経て体外に排出されます。体外に出すルートが2つあるため、軽度や中等度の腎臓障害でも用量を変えずに使えると考えられています。もちろん、新薬ですから、それなりの副作用の注意は必要です。

また、アロプリノールと違って、高尿酸血症が適応となっています。日本の痛風が軽い傾向にあるのも治療が早期に開始されるからだと考えられます。

アジアの国々はもう一つのfebuxostatを必要とする理由があります。中国、韓国、台湾、その他の国々の人々はHLA-B*5801という遺伝子を持っている人が多く、アロプリノールを服用したのちの重症皮膚副作用を起こしやすいのです。台湾では新しくアロプリノールを服用する前に遺伝子検査を行う事が決まっています。アジアの国々が経済発展するにつれ、痛風が激増していることがわかっています。そのため、アジアの人々はアロプリノールに替わる痛風治療薬を待ち望んでいます。

日本初の新薬で、しかも世界中に貢献する薬が発売された事は喜ばしいことだと思います。この新しい薬剤は日本薬理学会の創薬科学技術賞などいくつかの賞を受賞しています。日本の製薬会社には、このような新薬を次々に開発し、日本の産業や雇用にも貢献してほしいものです。


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