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2009年02月10日

第4号 高尿酸血症について

血清尿酸値が高いと心臓の冠動脈不全、更には別の原因による死亡率が高いのかどうかは大きな問題です。初期の研究では、尿酸値が高いと冠動脈不全で死亡する確率が高いことが発表されていたのですが、その後、それは肥満、高血圧や脂質異常症に付随するものであり、尿酸は直接の死亡の原因ではないという論文が出ました。

しかし、最近になって、やはり高尿酸血症が冠動脈不全による死亡の直接の原因となるという論文が多く出てきています。このような論文で問題なのは、欧米人と日本人で事情が異なるかも知れないことです。できるだけ日本人で得られた証拠を参考にすべきです。その意味で、女性における高尿酸血症と冠動脈不全による死亡との直接の関連の証明、男女にかかわらず高尿酸血症と全体死亡との関連の証明は重要な論文です(箱田他、J Rheumatol. 2005;32:906-12.)。箱田先生の研究以前にも冨田先生たちの論文がでていて、高尿酸血症が冠動脈不全、脳循環不全による死亡、全死亡の直接の原因になるという報告をしています(J Epidemiol. 2000;10:403-9.)。

今回紹介する論文は台湾のグループによるもので、今年の1月に発表されました(Arthritis Rheum. 2009;61:225-232.)。タイトルは、「血清尿酸値は全死亡、冠動脈による死亡、脳循環不全による死亡と直接関係:中国人のコホート研究」です。台湾のChen JH先生達による論文です。41,879人の男性と48,514人の35歳以上の人々のデータの分析です。全部で5,427人の死亡のうち、1,151 (21.2%)が冠動脈不全による死亡でした。そのデータの分析では、7 mg/dlを超える血清尿酸値の人の死亡率がそうでない人々より高いかどうかを検討しました。補正は、年齢、性別、BMI、コレステロール、中性脂肪、糖尿病、高血圧症、喫煙、飲酒などで行いました。方法はコックス回帰という方法です。その結果、全死亡についてのハザード比は1.16 (P < 0.001)、冠動脈不全に対しては1.39 (P < 0.001)脳循環不全による死亡に対しては1.35 (P = 0.02)でした。ハザード比は、高尿酸血症の人がそうでない人に比較して何倍死亡の可能性が高いかを示す値です。Pの値は、もし0.05以下であれば、その関係はほぼ正しいことを示す指標です。

特定の病気を持っている人の中だけでの分析でも、高尿酸血症は死亡を高めるという結果が出ました。つまり、高尿酸血症(1.44, P < 0.001)、糖尿病 (1.64, P < 0.001)でした。更にメタボリックのリスクが低い人々の間でも高尿酸血症による冠動脈不全死亡のハザード比は1.24 (P = 0.02)、全死亡のハザード比は1.48 (P = 0.16)でした。結論は、高尿酸血症が台湾の一般の人々の間、高リスクの人々の間、低リスクの人々の間で全死亡、冠動脈不全による死亡、脳循環不全による死亡の直接の原因になっているというものです。

中国人における高尿酸血症と死亡に関する研究はすぐに日本人にあてはめるわけには行きませんが、欧米人に比べるとはるかに近い関係なので参考になると思います。最近の論文ではやはり高尿酸血症が死亡の直接の原因になっているという結論が多くなっています。何倍も死亡が多いと言うわけではありませんが、1.1倍でも、死亡全体の数が多いので、PAR(population attributable risk)は多いことになります。これは、高尿酸血症のリスクが無くなると、どれくらいの割合の死亡が減るかという推定値です。これからも国民全体の高尿酸血症を是正すると言う対策を継続する必要があります。


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